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労務問題でつまずかないためのQ&A【2】「子の看護休暇」ってなに?

2012年11月09日

 スタッフの1人から、診療開始時刻ぎりぎりに電話がかかってきて、「子供が熱を出したため、保育園に預けることができなくなった。今日は休ませてほしい」といってきました。
「急にそんなことをいわれても困る」といったのですが、
「看護休暇は権利です」といい返されてしまいました。
看護休暇は拒むことができないのでしょうか。

 小学校就学前の子を養育するスタッフは、医院に申し出ることによって1年間につき5日(子が2人以上いる場合には10日)まで、病気やけがをした子の看護のために、休暇を取得することができます。
この休暇が「看護休暇」と呼ばれているものです。

スタッフから看護休暇の申し出があった場合には、業務繁忙などの理由があったとしても、当該休暇の取得を拒むようなことはできません。

働く女性の育児休業の取得率は約9割となっています。
しかし、その裏で育児休業をとらず、妊娠や出産を機に仕事を辞めてしまう女性も少なくありません。
離職の大きな理由は「仕事と子育ての両立が難しい」ということがあげられています。

育児・介護休業法(「育児休業、介護休業等育児または家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」)では、子育て中も仕事を続けられやすい環境を整備するために、事業主である医院が守るべき義務などが定められています。

看護休暇もそのひとつです。

看護休暇は、小学校就学前の子を養育するスタッフ(男女を問わず)が、負傷または疾病にかかった子の世話を行うために取得することのできる休暇です。

1年間(医院側でとくに定めをしていなければ、4月1日から翌年の3月31日までの1年間を指します)につき、「5日間」までの取得が認められています。
小学校就学前の子供2人以上いる場合には、1年間につき「10日間」まで取得可能です。

スタッフは、子が病気やけがをした場合のみならず、病院への付き添いや、子に予防接種や健康診断を受けさせる場合なども、看護休暇を取得することができます。

スタッフが看護休暇を取得しようとする場合には、次の事項を明らかにして、医院側に休暇取得を申し出ることになります。

・対象となる子の氏名、生年月日
・看護休暇を取得する年月日
・対象となる子が負傷または疾病にかかっている事実

このスタッフからの休暇取得の申し出は、口頭でもかまわないとされていますので、電話で申し出ることも可能です。

また、看護休暇制度は、子が病気やけがをし、親の世話を必要とするその日に、親であるスタッフに休暇の権利を保障するための制度ですから、休暇取得当日の電話による看護休暇取得を申し出ることも可能であるとされています。

医院側は、スタッフから看護休暇取得の申し出があった場合には、これを拒むことはできません。
医院の規模が小さいからとか、仕事が忙しいからという理由があったとしても、看護休暇を取得させないことは、育児・介護休業法違反となってしまいます。

また、看護休暇は、年次有給休暇とは別の制度ですので、使用者である医院側が時季変更権を行使し、看護休暇を他の時期に取得するよう命ずるようなこともできません。
スタッフ本人が指定したその日に、与えなければならないことになります。

このような休暇の付与が義務づけられているとなると、たとえば小学校就学前の子を養育しているスタッフを複数抱えているような医院では、スタッフが看護休暇を取得することによって、相当の負担を強いられることもあり得ます。
そこで、医院としては、医院に所属するスタッフの過半数と代表する者と書面による協定(労使協定)を結ぶことによって、以下の者を看護休暇の対象から除外することができます。

・採用後6ヵ月に満たない者
・1週間の所定労働日数が2日以下の者

労使協定を締結できたとしても、看護休暇の対象外とすることができるスタッフの範囲は限られてしまいますが、それでもスタッフの過半数を代表する者の同意が得られそうだということであれば、機会をみて労使協定を締結しておくべきでしょう。

なお、看護休暇中の給与については、法律上の規定はありません。
有給でも、また無給でもかまわないとされています。
できれば、就業規則等に看護休暇制度についての規定を盛り込むなどし、無給であるか有給であるかといったことも定めておくと、後で無用なトラブルになることを避けることができるのではないでしょうか。

 社会保険労務士法人 フォーブレーン
 代表 稲好 智子
 http://www.fourbrain.co.jp