2012年09月28日
「MS法人で節税ができるらしい」という話を耳にしたことのある先生、「MS法人ってどうなの?」と疑問をお持ちの先生は、多いのではないでしょうか?今回は、そのMS法人についてお話します。
医院の業務のうち、受付業務・レセプト請求・不動産の賃貸・機器のリース・歯科技工など、診療に付随した業務をメディカルサービスといいます。
MS法人は、それらのメディカルサービスを行う法人です(メディカルサービス法人略して、MS法人です)。
医院から診療以外の業務を切り離し、それをMS法人に「業務委託」すれば、新たに経費を計上することができるので、節税のメリットがあるといわれています。
しかし、MS法人には、知っておいていただきたいデメリットがあります。
医院の収入の大部分を占める保険収入は、消費税の非課税売上ですが、MS法人の収入のほとんどは、消費税の課税売上になります。
その売上が1,000万円を超えると消費税の課税事業者になりますので、消費税納税の負担が発生することが考えられます。
医院で節税ができていても、MS法人側で消費税の負担が生じてしまうのであれば、結局、節税ができていないということも考えられるのです。
また、MS法人には、利益が出ていなくても課せられる法人税均等割というものも存在します。
MS法人を設立する際には、司法書士報酬や印紙代などの設立費用が発生します。
また、MS法人独自の帳簿や申告書を作成する必要がありますので、税理士報酬の負担が増えることがほとんどだと思います。
どのようなコストが発生するのか、事前にチェックしておく必要があります。
MS法人は税務調査の対象になりやすいといわれています。
主なチェックポイントを2つ紹介します。
1)MS法人に支払っている業務委託などの価格設定のチェック:
医院とMS法人の間で行われている取引を、仮に他の業者と行った場合でも、同じような価格設定にするかどうか検討が必要です。
医院側で利益が出ている場合に、業務委託を高めの価格設定にする、逆に、MS法人側で、利益が出ている場合には、業務委託を低めの価格設定にするというのでは、単に「税金逃れ」を目的とした取引であるととらえられても仕方がありません。
税法には「経済的合理性」という考え方があります。
MS法人が、ひとつの独立した会社と考えられる以上、儲けを追求するのが合理的で、医院もムダな経費を節約するというのが合理的であると考えられます。
これに反する明らかに合理性がないような取引については、厳しいチェックの目が向けられることになります。
2)取引の実態があるかどうかのチェック:
MS法人が単なる形式的な存在ではなく、一つの会社として実態を備えていることが大切です。
実態がないとみられる事由をいくつかあげると、以下のようになります。
・MS法人が独立した事務所を持っていない。
・MS法人の役員である奥様(配偶者)の勤務実態がない。
・医院とMS法人掛け持ちのスタッフが多く、MS法人のみのスタッフがいない。
・MS法人が医院の施設を利用する際に、その利用料を医院に払っていない。
MS法人のスタッフのタイムカードなど、単なる「ペーパーカンパニー」でないことを証明するものを揃えておく必要があります。
ここまでで、MS法人のデメリットをご紹介しましたが、MS法人をつくることにより業務の幅が広がることは確かです。
また、診療スタッフと事務スタッフを明確に区分できますので、人件費の合理化も可能だと思います。
上記のデメリットとメリットを理解したうえで設立を検討してみてください。
なお、個人の歯科医院の場合で、節税を主目的にMS法人を併設するなら、一気に医院を医療法人化することをおすすめします。
次回では、その「医療法人」についてお話します。
デンタルクリニック会計事務所
所長
山下 剛史