2016年03月22日
(1)税務調査はどのような歯科医院に入るのか?
ようやく確定申告が一段落したら、次は税務調査の時期に入ってきます。
税務調査が好きな先生というのはおそらくいらっしゃいませんので、可能な限り税務調査には入られないようにしたい、と思われていることでしょう。
それでは、この税務調査の対象先はどのようにして決められているのでしょうか。
一般的に、税務調査の対象となる事業所の選定は、まず「KSK」と呼ばれるシステムで行われます。
KSKとは、「国税総合管理システム」の略で、われわれが提出した申告書は、すべてこのKSKの中にデータとして登録されます。
そして、このKSKのデータベースをもとに、次のような事業所が調査の対象となります。
●長期未接触事業所
1つ目は、単純に長年、税務調査が実施されていない医院です。
ここでの「長年」は、国税通則法に規定する「7年」のことを指します。
つまり、7年以上税務調査が入っていない事業所から優先的に選ばれる、ということになります。
●定量分析で異常値がある事業所
そして、2つ目が「定量分析」で異常が出ている医院です。
KSKで医院の数字を定量分析した結果、異常値が出ている医院が選ばれます。
たとえば、過去の医院の数字や同業他社の数字に比べて、異常に接待交際費が高くなっていたり、変動費率が上がっていたり、
利益が極端に少なかったりすると、税務調査に入られる確率はグンと上がると思います。
つまり、こういうことです。
『税務調査を避けたいなら「怪しくない申告書」を作成せよ』。
そもそもの話ですが、税務調査に入られたときにどのような対策を取るのかを考える前に、
どのような申告書を作成すれば税務調査に入られにくいのかを考えるべきです。
調査官も公務員ですがノルマがありますので、税務調査があれば何か見つけないといけないと考えるのはもっともなこと。
ですので、税務調査の対策というのは、税務調査が入ったときにどのように対応するのかではなく、
まずは調査に入られないような、異常値のない「怪しくない申告書」を作成するのが一番なんですね。
(2)税務調査を省略できる「書面添付制度」とは?
しかし、最近、なんとこの税務調査を省略することができるスキームができました。
それが、「書面添付制度」と呼ばれるものです。
書面添付制度とは、税理士法第33条の2に基づいて、税理士が税務署に提出する申告書に、
「計算し、整理し、または相談に応じた事項」を明らかにし、
「申告書の適正性を証明」するための「書面」を「添付」する制度です。
この書類の添付がある場合、
税務署は「税務調査をする場合には、書面を添付した税理士の意見を聞かなければならない(税理士法第35条)」となっています。
つまり、いきなり税務調査に入るのではなく、まずは税理士に申告書の内容についてヒアリングする機会(「意見聴取」といいます)が与えられます。
そして、意見を聞いたうえで、税務調査の必要がないと判断された場合には、
税理士に対して「現時点では調査に移行しない旨」の「調査省略書」が送付され、税務調査が省略されます。
では、どれくらいの確率で税務調査が省略になるのでしょうか。
「東京税理士界」のアンケートでは、
●法人税(消費税を含む)
・書面添付件数:3,300件
・意見聴取件数:103件
・意見聴取後の調査移行件数:36件
となっており、なんと
省略率:65.1%
となっていることがわかります。
しかし、この書面添付は、
書面を作成するのに時間を要すること、
いい加減な書面を作成した場合には最悪税理士が懲戒となるリスクがあること、
最近できた制度でまだあまり浸透していないこと、
などから、添付している事務所の割合は約8.1%となっています。(財務省『平成25事務年度国税庁実績評価書』より)
われわれの事務所でも、医療法人や規模の大きい個人の歯科医院から徐々に書面添付制度を始めております。
ぜひ書面添付制度にご興味のある先生は、お気軽にお問い合わせいただければと思います。
税理士法人キャスダック代表税理士
山下 剛史
⇒ http://www.dentax.jp