2012年10月12日
最終回は「医療法人成りによる節税」についてお話していきます。
今までで、節税方法をいくつか紹介してきましたが、今回ご紹介する「医療法人成り」にかなう節税方法はありません。
医療法人成りでは、主に3つの方法で節税をします。
私は、これを「医療法人3種の神器」と呼んでいます。
個人医院の「医院の所得」には「所得税」が課税されます。
所得税は、所得の増加に応じて、税率が高くなる仕組みです(最高40%)。
一方、医療法人の「医院の所得」には「法人税」が課税されます(所得税から法人税に切り替わります)。
法人税の税率は所得税とは異なり、基本的に一定です。
しかも、平成23年の改正で、法人税率が30%から22.5%に引き下げられることが決定しました。
さらに、大企業を除いて、年800万円以下の部分の所得については、15%という優遇措置がとられています(これも18%から引き下げられています)。
役員報酬を支払うとどうなるのでしょうか。
まず、医療法人側で「役員報酬」は経費(損金)に算入することできます。
さらに、それを受け取った院長側でも、サラリーマンにのみ認められている「給与所得控除」というのが使えます。
この給与所得控除とは、給与の金額に応じて一定の割合を乗じて計算した概算の経費を控除できるという仕組みです。
医療法人では、院長に退職金を支給できます。
この退職金のよいところは、毎月支払う役員報酬に比べると、課税がかなり低く抑えられていることです。
しかし、多額の退職金を支給しようと思っても、なかなかキャッシュで貯めておくことは難しいと思います。
そこで、よく活用されるのが「生命保険」です。
個人の生命保険は、少額の控除しか認められていませんが、医療法人であれば一定の保険料は経費になります。
これをうまく活用すれば、退職金の原資を毎年経費に算入しながら確保することが可能となります。
セミナーや講演などで、出張の多い先生もおられると思います。
そんな先生に効果があるのが、この「出張旅費」を使った節税です。
個人の場合、出張先での飲食や雑費にあてるための「日当」は経費になりません。
しかし、医療法人の場合、「出張旅費規程」を整備しておけば、日当が経費になります(ただし、「通常認められる範囲」に限りますのでご注意ください)。
弊社では2012年前期だけでも、2ケタ近い医療法人成り手続きの依頼をいただきました。
法人税率の引き下げにより、今後、法人成りはさらに加速していくでしょう。
医療法人成りには、もちろんデメリットもあります。
たとえば、設立費用・厚生年金加入・税理士報酬などの追加の費用・解散時の残余財産の国への帰属などです。
それらを含めて一度、シミュレーションをしてみることをおすすめします。
なお、売上高が8,000万円以上の医院は、メリットが出る可能性が高いので必須です。
弊社でも、医療法人設立専門の行政書士事務所としてシミュレーションを無料で行っておりますので、法人成りを考えている先生は、ぜひご活用ください。
ここまでで、いくつかの節税テクニックをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
もちろん、節税は非常に大事なのですが、以前にもお話ししましたように、「節税」だけに目がいってしまい、「節税貧乏」にならないことが大切です。
今回の「歯科医院の節税で知っておきたい6つのポイント」シリーズの内容が、先生の今後の経営に少しでも役立っていただければ、これほどうれしいことはありません。
ぜひこれからも税金の知識を身につけていただき、より医院にお金が残る体質を築いてください。
デンタルクリニック会計事務所
所長 山下 剛史
http://www.dentax.jp