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今から始めよう歯科医院の節税対策6つのポイント【4】消費税の基礎知識を押さえて増税時代に備えよう

2012年09月14日

「増税するのか? それとも増税しないのか?」なかなか答えのでない消費税ですが、この消費税の仕組みを理解し、節税に役立てていくことを、改めて考えてみます。

【本則課税と簡易課税の違いを理解する】

消費税は、売上に対して「預かった税額」から仕入れに対して「支払った税額」を差し引いて計算します。

「預かった税額」が「支払った税額」よりも多ければ、その差額を納付します。
逆に「支払った税額」が「預かった税額」よりも多ければ、その差額を還付してもらえます。

これが消費税の基本的な考え方です。

計算方法には「本則課税」と「簡易課税」という2つの方法があります。

本則課税は「実際に預かった税額」-「実際に支払った税額」という計算をするのに対して、簡易課税は、「実際に預かった税額」-「概算計算の支払った税額」という計算をします。

共に「実際に預かった消費税」を使う点は、共通ですが、「支払った税額」に「実際額」を使うか「概算額」を使うかの点で異なっています。

その概算額は「実際に預かった税額」に一定の割合を乗じて計算します。
ですから、簡易課税は「実際に支払った税額」について一切考慮しなくていいため、本則課税に比べて「簡易的」な方法ということになります。
ただし、この簡易課税は、2期前の課税売上が5,000万円以下の場合に限り使えます。

なお、課税売上とは、消費税が課税される売上のことをいい、自費売上・雑収入などが該当します(保険売上は、非課税です)。

ここまでを、わかりやすいように計算例で説明しましょう。

《A歯科医院》

一、前提  保険売上 8,000万円/自費売上 2,000万円/売上合計 1億円/      
      預かった税額 100万円/支払った税額 150万円/
      2期前の課税売上 1,800万円

ニ、本則課税による場合

(1)売上合計のうち課税売上の占める割合:2,000万円÷1億円=20%
(2)支払った消費税に上記の割合を乗じる:150万円×20%=30万円
(3)納める税額:100万円-(2)=70万円

三、簡易課税

(1)適用の判定:1,800万円(2期前の課税売上)≦5,000万円(簡易課税の適用要件)適用あり。
(2)支払った税額:「預かった税額」に一定の割合を乗じて計算する:(自費の場合は50%)100万円×50%=50万円
(3)納める税額:100万円-50万円=50万円

四、有利判定

70万円>50万円、よって簡易課税が有利で、50万円を納税します。

【歯科医院は簡易課税が有利なケースが多い】

歯科医院の場合、簡易課税で計算したほうが得になるケースが多いのですが、その理由は主に次の2つです。

(1) 歯科医院は人件費が多い業種だから簡易課税が有利

歯科医院は、他の業種と比較して「人件費」の経費に占める割合が高いという特徴があります。
人件費には消費税が課税されませんので、「実際に支払った税額」が少なくなりがちです。

このような特徴を踏まえると、「実際に支払った税額」を使う本則課税よりも、それをまったく使わない簡易課税のほうが有利になる場合が多いのです。

(2) 簡易課税は、税理士報酬が安く設定されていることが多い

本則課税の計算をする場合、簡易課税に比べて倍以上の時間がかかります。
そのため、簡易課税の税理士報酬は、本則課税に比べて低く設定されていることがほとんどです。

また、インプラントなどの自費診療の多い医院は、患者さんから預かっている5%の消費税も売上と勘違いして、それを使ってしまって納税の時に納めるお金がないなどということもよく見受けられます。

急な納税で資金繰りが厳しくならないよう、顧問の税理士さんとしっかりと納税の予想を立て、計画的な資金管理を行ってください。
そうすれば、たとえ消費税増税の時代がきたとしても、恐れることなく経営していけます。

(今回のメルマガの内容は、平成24年度6月1日現在の法令等によります)

 デンタルクリニック会計事務所
 所長 山下 剛史
http://www.dentax.jp