2012年08月24日
節税のポイントの3回目は、減価償却についてお話していきます。
「減価償却」とは?
金額の大きい機器や備品を購入した場合、支払ったお金は、全額支払った年に経費にはできません。
その機器や備品の代金を数年にわたって、分割して経費にする決まりになっています。
これを「減価償却」といいます。
たとえば、350万円のユニットを増設する場合を考えてみましょう。
ユニットは7年で経費になります(ユニットは、法律上7年で償却と決まっていて、これを法定耐用年数といいます)。
そのため、ユニットを増設した年に経費になるのは、
350万円÷7年=50万円です(実際には「定額法」「定率法」という方法などがあり、月数按分もありますが、ここではわかりやすくするために省略します)。
注目していただきたいのは、その年に「350万円」の支出があるにもかかわらず、経費になっているのは「50万円だけ」ということです。
利益がかなり出ているから、ユニットを購入して節税をはかろうとしても、「焼け石に水」というわけです。
ユニットの耐用年数を通じて、最終的には350万円全額が経費になるのは確かなのですが、キャッシュアウトと会計上の経費が一時的に一致しないというのは、医院経営において問題になってきます。
実は減価償却には、この原則とは別に、購入した年の減価償却を増やすことができる方法がいくつかあります。
次にそれらを紹介していきます。
減価償却の対象になるものを「減価償却資産」といいます。
機器や備品のような固形のものは、減価償却資産になり、上記のような減価償却を行わなければなりません。
ところが、使用可能期間が1年未満のものと、金額が10万円未満のものは、購入したその年に経費にすることができます。
これは、重要性の低いものは簡単な処理をしてもよい、という考え方からきています。
さらに、30万円未満の物を購入した場合も、購入した年にすべて経費になります。
これは、青色申告を行っている個人事業主や法人(出資金額等が1億円以下)についてのみ認められた優遇税制です。
ただし、合計で年間300万円までが限度です。
高額な医療機器の設備投資を行った場合、「特別償却」という優遇制度を利用することができます。
特別償却とは、取得した事業年度に、通常の減価償却にプラスして一定の金額の減価償却を上乗せできるものです。
歯科医療機器で対象になるのは、500万円以上のもので一定のものです。
ユニット、レーザー、CTなどが含まれ、取得した年に購入した金額の14%を通常の減価償却に追加できます。
たとえば、600万円のレーザーを購入した場合、
通常の減価償却は、ざっくり計算すると、600万円÷6年=100万円
追加の減価償却は、600万円×14%=84万円
100万円+84万円=184万円が、購入した年の経費になり、通常の減価償却よりも84万円が優遇されます。
中古資産の耐用年数は、見積もりによって計算します。通常は、次の算式によって計算します。
(1)法定耐用年数の全部を経過した場合:耐用年数=法定耐用年数×20%
(2)法定耐用年数の一部を経過した場合:耐用年数=法定耐用年数-(経過年数×80%)
※それぞれ計算した年数が2年未満であれば2年、1年未満の端数は切り捨てます。
たとえば、4年落ちの車を購入した場合を考えてみます。
新車の耐用年数は6年です。
(2)の算式を用いると、X=6年-4年×80%=2.8年となり、1年未満は切り捨てですので、耐用年数は2年となります。
最短の耐用年数は2年ですので、中古車を買うなら3年未満より4年以上落ちのものが、早く経費で落とせるということになります。
投資効果のチェックが第一!
機器や備品による節税は、大きな効果を発揮しますが、
「それが医院にとって本当に必要なものであるかどうか?」と
「投資した金額を回収できるかどうか?」のチェックは必ず行ってください。
それを踏まえた上であれば、今回ご紹介した内容は、
「どうしても利益が出てしまった場合の最高の節税方法」の一つとなるはずです。
※ご紹介した方法は、平成24年度6月1日現在のものです。
また、金額はわかりやすく解説するためにおおまかな計算で行っております。
詳しい計算は顧問の税理士さんにご相談ください。
デンタルクリニック会計事務所
所長 山下 剛史
http://www.dentax.jp