2003年10月20日
日本接着歯学会の2003年度シンポジウムが、東京一ツ橋の学術総合センターで開催され、大盛会であった。最近は審美性を損なうメタル冠を避けた歯冠修復法への関心が高まっている。
今回とくに注目されたのは、接着性レジンを活用するレジンコアの支台築造法により、歯根破折を予防する適確な間接法の解説(坪田有史先生)と、コンポジットレジン・セラミックス併用修復物の辺縁封鎖性(福島正義先生)の2つの報告であった。
1. 間接法によるレジンコア支台築造法のすすめと利点
従来のメタル支台築造では歯根破折のトラブルが多いことから、最近はレジンによる支台築造への関心が高まっている。福島俊士先生(鶴見大学教授)坪田有史先生(鶴見大学)らのグループ研究は、15年にわたる基礎的な臨床研究の結果、現時点では象牙質と確実に接着できる間接法によるレジン支台築造が推奨できるとした。
メタル支台築造の問題点は、メタルの弾性係数や硬さが象牙質の物性と著しく異なるため、咬合圧の応力集中による歪みが生じ易いことである。
これに比し、レジン支台は象牙質の物性に近く、応力を緩和する利点がある。
また、間接法の利点は、直接法の場合に比して重合収縮による不適合が予め補償されるし、重合を促進して強化できる。
間接法の最も大きな利点は、レジンコアと根管内象牙質との接着が、確実強固にできることである。この一体化が歯根破折を防ぐ要因になるのである。
間接法は、臨床的には作業が複雑になるが、歯科医療の立場からみると、確実性のある治療法を施術することになり、発想の転換による成功例として、高く評価したい。
クラレ社からは、1994年に支台築造用の“クリアフィルDCコア”が発売されていたが、これを合理的に活用する臨床術式が開発されたことになる。
資料として、坪田有史、福島俊士著「レジン支台築造をマスターする」(歯界展望2002年5月号~9月号)を参照されたい。
2. コンポジットレジン・セラミックス併用修復物の辺縁封鎖性
接着性レジンやコンポジットレジンの進歩に伴って、臼歯部のメタルフリーの歯冠修復法への関心が高まっている。
最近のエナメル質の削除を可及的に少なくする修復術MI(ミニマル・インターべンション)の場合にも、エナメル質と修復物の辺縁封鎖の確実性が最重要な問題となっている。
福島正義先生(新潟大学助教授)は、この問題に対応するメタルフリーの修復法(3CR)の研究を進めている。
今回はその一環として、窩縁部の辺縁封鎖の状況を臨床的に精査し、コンピュータで解析した結果、コンポジットレジンとセラミックスの併用による3CR法が有用であることを報告した。
従来の歯冠修復治療の最大の弱点は、辺縁部からの二次齲蝕の侵襲であった。
この弱点の克服が、審美的歯冠修復法を確立するためのキーポイントのひとつである。