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第1回国際接着歯学会の大盛況が日本の歯科界を元気づける

2002年07月01日

※この原稿は、2002年 6/20付・友の会「Fax Box」の「総歯研・増原レポート」に掲載されたものです。
 
 
第1回国際接着歯学会が第20回日本接着歯学会と同時に、東京都市センターホテルで開催された。この第1回国際大会は日本の主導で開催されたが、予想以上に大盛会であった。

EU・北米・南米・アジアの20ヶ国から、多くの参加者と演題が集まり、招待講演、特別講演、口頭発表、ポスター発表など200題に達し、登録参加者は800名を越える大盛況であった。日本独自に育ってきた「接着歯学」への関心が、このように高まっていることは極めて意義深いことである。

この背景には、海外の歯科大学との交流や留学生の交換、さらには日本の接着性レジン製品の品質に対する信用の高いことなどがあげられる。

日本で接着性レジンの研究を始めたのは40年も前のことである。最初は、MMA-TBB系レジンを矯正用ブラケットの接着材として製品化し、スーパーボンド(サンメディカル社)として上市した。

次いで、歯質接着性モノマーのリン酸エステル系の接着性レジンセメントクリアファイル(クラレメディカル社)が商品化された。日本ではこの2系統の歯科用接着材を基盤として改良を続け、用途を広げて充実、今や日本の接着性レジン製品は世界のトップレベルの商品として高く評価されているのである。

 
●接着歯学が世界の歯科医療を変革する

今回の招待講演、特別講演で強調されたトピックスは、
(1)審美的修復の進歩の原点が接着性レジンの活用にあること、
(2)ノンメタルの修復時代になってきたこと、
(3)ムシ歯の予防と最小修復治療法MI(MinimalIntervention)がこれからの新しい歯科医術であることなどであった。

招待講演では、ベルリンのフンボルト大学のルーレ教授が、審美的修復の臨床術式を基礎研究に基いて、確実に実施する条件(ルール)を「やって良いことdo」と「やってはいけないことdo not」に分けて明確に示してくれた。ルール通りにしない自分勝手な操作では臨床で成功できないことを示し、接着技術の基本を教えてくれた。

審美歯科の視点からオールセラミックス修復(ノンメタル)または複合コンポジットレジンによるメタルフリーブリッジなどの適用が多くなっているが、ドイツ・キール大学のケルン教授はパナビア21とパナビアFを使用して好成績を得ていた。

日本の歯科医療で、これから最も注力したいのは、ムシ歯の予防とMI治療(最小修復治療)の確実な普及である。MI治療の効果と術式についての講演には参考になる指摘が多かった。この術式に適応する道具や接着性シーラントを揃える必要があるが、フッ素徐放性シーラントにはティースメイトF-1(クラレメディカル社)などが適材である。大森郁朗先生の「シーラントとコート材の臨床テクニック(クインテッセンス出版)」使用法の完全ガイドが参考になる。

この国際学会では、アジアセッションのプログラムをつくり中国、タイ国、マレーシア国などの研究報告を集めて熱心に討論されたが、日本の大学との交流が進んでおり、大変良い企画でああった。日本の接着歯学が世界の歯科医療を変革していくことが感じられた。

日本接着歯学会では、教科書として「接着歯学(医歯薬出版)」を上梓したが、日本の接着材と臨床応用については増原英一編著「歯科用接着性レジンと新臨床の展開(クインテッセンス社出版)」があるので、これらを参照して、新しい歯科医療に前向きに取り組んで欲しいと思う。

日本で育った「接着歯学」が世界の歯科医術を変革していく時代になってきたのである。