2012年01月05日
「接遇」とは、「思いやり」や「もてなす」という気持ちを形で表現することです。
こんなエピソードがあります。
ある食事会で、お招きしたお客様が、フィンガーボールの中のお水を思わず飲んでしまいました。
フィンガーボールとは、食事で汚れた手先をきれいにするためのものです。
同席したお客様たちは、この行為を「恥知らず!」と笑ったり、「マナー違反」だと軽蔑した眼差しを向けていました。
そんな中、食事会を催した主人はどのような行動をとったと思いますか?
主人は、同じようにフィンガーボールのお水を飲み干したといいます。
お客様に恥をかかせない思いやりです。ここから「接遇」という言葉が生まれたようです。
相手を心から大切にし、思いやり、もてなすこと。
それが接遇です。
接遇というと、何でもかんでも先取りしたサービスをすれば、上級のようなイメージもありますが、そうではないのです。
たとえば、診療室にお体のご不自由な患者さんが来院されたとします。
患者さんは、お手洗いを使いたいとおっしゃいました。
当然スタッフであるあなたは、この患者さんに手を差し伸べお手伝いをします。
この行為に対して、この患者さんはどのように受け止めるでしょうか?もちろん、心から感謝してくださる方もいらっしゃいます。
しかし、中には「自分のことは自分でしたかった!」と、むしろご不満なお気持ちを抱く方もいらっしゃるのです。
「人によって受けたいサービスが違う」からです。
これを知っておくだけでも、接遇の奥深さがご理解いただけると思います。
接遇は、スキルやテクニックだけでは相手の心に響きません。
接遇には、相手をよく観察し、判断能力が必要です。
相手のお気持ちを察する感度が必要です。
コミュニケーションをとるためのボキャブラリー・知識も必要です。
ユーモアのセンスや傾聴スキルも必要です。
もちろん、それらのスキルテクニックは、相手を尊重し思いやれる豊かな人間性の上になくてはなりません。
人間力が成長せずに、スキルテクニックだけが先行しても、本物ではないのです。
すぐにメッキは剥がれ、見せかけだけのものになってしまうでしょう。
接遇力とは人間力とともに成長するものです。
では、人間力とは?
それは、人を思いやる気持ち、働く意欲や情熱、物の考え方や見方などがつくり出すもので、努力すればするほど、どんどん積み重ねていけるものです。
際限なく積み上げていけるのです。
この積み上げこそが「自分ブランド」を築きます。ご自身をブランド化してみましょう。
個々のブランド力の結集が組織のブランドを作り上げていきます。
しかし、このブランド化には盲点が一つあります。
それは外側からは見えにくいのです。
人への思いやりや、物の見方・考え方は外側から見えません。しかし、見えない部分に大切なものがあるのです。
この見えない部分を大切にする力、相手の見えない部分をしっかり見ようとする力も、同時に養っていただきたいと思います。
「人間力を磨くこと」こそが、医療従事者としてもっとも重要な価値なのです。
それは、私たちが対応するのが、患者さんだからです。
歯科に来院される患者さんの精神状況は「怖い」「不安」「ドキドキ」……そんなマイナス感度が高いのです。
そんな患者さんに、安心し信頼して最高の精神状態で治療に臨んでいただくために、心のこもったおもてなしや対応をするのです。
医療だからこそ、質の高い接遇が必要なのです。
また、患者さんが歯科医院にお越しになるのは当たり前ではありません。
ご存知のとおり歯科医院の数は7万軒。
コンビニの1.7倍の数といわれています。
7万軒もの歯科医院の中から、私たちの歯科医院を選んでくださった、お一人お一人の患者様にまず感謝をしなければなりません。
感謝の気持ちで対応すれば、まず接遇の基本はクリアされているはずです。
患者様が来院されること自体が奇跡です。
毎日が奇跡の連続なのです。
なんて素敵で素晴らしいことでしょう!「7万分の1の奇跡」を感じ、味わいながら、患者さんを心から感謝してお迎えしてほしいのです。
接遇とは、この感謝の気持ちを形に表すことです。
次回から、具体的に接遇の基本についてふれていくことにします。
>>株式会社オフィスウエーブ 代表取締役 澤泉仲美子
http://www.office-wave.jp/