2010年10月04日
みなさんこんにちは。株式会社ブライソン経営研究所の山田です。
これから6回にわたり“スタッフのモチベーションアップ”について情報発信してまいります。
第1回目は、モチベーションに関する基本的な知識について説明をしていくことにします。
1 モチベーション(動機づけ)とは
モチベーションとは“動機づけ”のことで、教育心理学では「人に行動を促す心理的エネルギー」としています。
したがって、院長先生がスタッフに対し何かを施すとスタッフのモチベーション(行動しようという心理的エネルギー)を高めることもできますし、逆に低くすることもできるのです。
院長先生「あれ、今日は朝早いねぇ。やる気満々みたいだね」
スタッフ「はい、院長。昨日患者様から褒められたからです。褒められるとモチベーションが上がりますよね。」
この場合は、“褒めるという行為”が、スタッフの心理的エネルギーを高めることにつながったのです。
このように心理的エネルギーを高める、つまり人のやる気を高める場合には、いろいろなやり方があります。
今回はよく知られた2つの動機づけについて説明をしていきましょう。
2 外発的動機づけとはどういうこと
院長先生「山田さん。悪いけど、ジュースを買ってきてもらえないか?」
スタッフ「すみません。今、手一杯で時間がないのですが……」
院長先生「そうか、買ってきてくれたら千円あげるよ!」
スタッフ「えっ、買い物にいくだけで千円もらえるのですか? すぐに行ってきます」
スタッフの山田さんは行動を起こしました。
つまり、動機づけに成功したわけです。
なぜ、山田さんは行動を起こした(ヤル気になった)のでしょうか?
千円(ご褒美)を手に入れたいと考えたからです。
この場合、行動の目的は、ご褒美を獲得することなのです。
このように、外から与えられるご褒美を外発的報酬と呼び、外発的報酬を得たいがために行動している状態を、外発的に動機づけられている(外発的動機づけ)といいます。
外発的報酬には、正の報酬と負の報酬があります。
正の報酬はこの事例のように、もらってありがたい報酬です。
それに対し、負の報酬は罰・罰金などのように、できればもらいたくないものです。
3 内発的動機づけとはどういうこと
外発的報酬に対し、内発的報酬を得るために行動している状態を、内発的に動機づけられている(内発的動機づけ)といいます。
内発的報酬とは、その人の内面的なご褒美で、ものごとを成し遂げたときの達成感、今までできなかったことができるようになったという成長感などが、比較的に大きなご褒美となります。
また、趣味に没頭している(漫画の本を読む、ゲームをやっている)ときのように、それ自体が面白い(感覚)などがあります。
“仕事の中身は辛いけど、やり遂げたときの達成感は何にも代えがたいから頑張る”あるいは、“できるようになったときの(成長した)満足感が忘れないので頑張る!”は内発的に動機づいている状態です。
4 2つの動機づけの特徴と使い分け
今回のポイントは「2つの動機づけのどちらがよいのか」を理解することではなく、どのように使い分けるかという視点を持つということです。
では、2つの動機づけの特徴について説明してみましょう。
外発的動機づけの特徴は、行動に結びつきやすい半面、外発的報酬がなくなると行動がともなわなくなるということです。
千円をもらえる場合にはジュースを買いに行きますが、千円もらえなくなると、買い物にも行かなくなるということです。
あるいは、よく叱る厳しい上司のもとでは、上司が目の前にいるうちは叱られないようにするために頑張って仕事をしますが、上司が不在になると、叱られることがないために仕事も手抜きをするようになります。
行動の目的が外発的報酬にあるためです。
したがって、外発的動機づけによってスタッフの指導を行っている場合には、常に監視をする必要があります。
内発的動機づけの特徴は、すぐに行動には結びつかない半面、主体性がともなうために長続きするという点です。
したがって、同じ仕事をしていても、内発的に動機づいているほうが、主体性的で創意工夫やもっとうまくやろうと努力もともなうようになります。
ただし、内発的に動機づいている場合には、外発的報酬を与えると、徐々に外発的に動機づいた状態になりますので要注意です。
つまり、主体的に勉強している子供に対して、テストでよい点をとったらお小遣をあげるなどのようなことをすると、お小遣を当てにして勉強をするようになっていくということです。
<第1回目の提言>
ゴルフやスキーなどを始めるきっかけは、友人に強引に連れて行かれたという方が多いのではないでしょうか?
しかし、一度経験してみると、その面白さ・達成感あるいは成長感を味わうことができます。
その結果、内発的に動機づけされ、逆に友人を誘う側になってしまうものです。
仕事でも同様です。
ひと通り経験してみないとわからないことが多いものです。
一見辛そうに見える仕事であっても、ひと通り経験すると、面白みや達成感あるいは成長感などを味わうことができます。
単にお給料や待遇がよいからという理由で、医院に勤めにきたスタッフも、仕事そのものに興味を持つようになり、主体性が芽生えてきます。
このように外発的動機づけによってひと通り経験させ、内発的動機づけに導くといった方法はビジネスにおいては定石と考えてよいでしょう。