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スタッフのモチベーションアップ【2】 新人スタッフのやる気を引き出す指導法

2010年10月18日

前回は、スタッフのモチベーション(動機づけ)を高めるアプローチとして、外発的動機づけと内発的動機づけについて説明しました。

そこで2回目の今回は、この2つの動機づけを、新人スタッフの育成に活用する方法について説明してみましょう。

まずはこんなお話しから……。

 

1 “百マス計算”

皆さんは“百マス計算”という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?

これは、小学校などで児童の学習意欲を高める効果的な指導法の一つとして紹介されています。

ではどのような指導法なのかを簡単に説明しましょう。

(1) ルール

1:100題の計算問題が用意されています。
児童たちは、いっせいに問題に取り掛かかます。
同時に教師はストップウオッチのボタンを押して時間を測定しはじめます。

2:すべての問題を解き終えたら児童は挙手をします。
教師は「はい、5分10秒です」などと、挙手した児童に対して時間を伝えます。

3:児童はその時間を記録し、前回と比べてどのくらい記録が短縮されたのか、成果を確認します。

4:記録が伸びたら、教師はみんなの前で褒めてあげます。

5:さらに、次の達成目標(時間を1分縮めるなど)を決め、どうしたら目標が達成できるかを考えさせます(以後1~4を繰り返す)。

(2)なぜやる気が高まるのか?

・記録が更新されるたびに、児童のやる気は高まっていきます。

同時に、自分自身に対する自信も高まり「自分は有能な人間なのだ。
もっと自分を高めていきたい」と考えて、さまざまな課題にチャレンジしていくようになります。

・結果、計算問題が速く解けるだけでなく、短期間に多くの漢字を覚えたり、高い跳び箱も飛べるようになっていきます。

(3)ポイント

・成功体験が「達成感や成長感、さらに自分に対する自信の高まり」を本人に感じさせ、この経験が向上心を後押しし、
それが高い学習意欲に結びついているのです。

・はじめは、外発的動機づけ(教師の指示・命令)によって百マス計算に取り組んだ児童も、成功体験を積み重ねることにより、
内発的に動機づけ(達成感や成長感を得るために努力する)られた状態になっていきます。

 

2 新人スタッフ育成への活用

新人スタッフを育成していく場合に大切なことは、向上心を育てることとやる気を引き出すことです。

そのためには、百マス計算の例のように、成功体験を積ませることが効果的です。

たとえ、はじめは外発的に動機づけてやらせたとしても、成功体験を繰り返しているうちに、内発的に動機づけられていきます。

ところで、スタッフの向上心ややる気を高めるためには、百マス計算の例のような成功体験「目標設定―(自分の努力)―達成」の一連を意識して仕事を任せていくとよいでしょう。

その時には、次の3つの原則を守るよう心がけてください。

(1) スモールステップの原則

・いきなり高い目標を設定してしまうと、挫折してしまう場合があります。

これでは本末転倒です。

達成感や成長感の回数を増やすことを考えます。

したがって、仕事のプロセスをいくつか段階的に区分けし、一つひとについて目標を設定して任せていくほうが、モチベーションを高めることにつながります。

(2) 目標は、定量的(数値)に表現する

・スタッフに達成感や成長感を味わう経験をさせるためには、明確な目標を設定することが何よりも重要です。

目標が明確でないと、達成したかどうかがわからないからです。

そのためには“百マス計算”では時間を測定したように、定量的(数値)に示すとよいでしょう。

また、目標は「何を、どのくらい、いつまでに」の3つの要素を盛り込むようにしてください。

例)院長「では、今、説明したA作業だけど、1週間で2時間以内にできるようになってください。それがあなたの目標です」

(3) 目標を達成したときは褒める

・目標を達成しても、周囲から認められないと“達成感”が得られません。

院長は、スタッフに対して目標を設定して任せたのであれば、達成したときには必ず“褒める”ことを忘れないでください。

他のスタッフの前で褒めるとさらに効果的です。

人は誰もが、周囲に認められたいという欲求があるからです。

その欲求を満たしてあげることで、仕事へのやりがいをより高めることができます。

・褒める場合は、“おだてる”にならないように、次の例のように、客観性を加味して褒めると納得度が高まります。

例)院長「よくできましたね。2時間以内でできるようになりましたね。
実は、2時間以内でできたスタッフはあなたが始めてです。
この後も自信を持って取り組んでください」

 

以上、(1)~(3)の原則を大切にして、新人の育成に取り組んでください。