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スタッフのモチベーションアップ【3】 やる気のないスタッフのモチベーションアップ法

2010年11月01日

今回は、やる気が感じられないスタッフのモチベーションアップに的を当てることにします。

では、こんなケースから……。

 

1:スタッフAさんのケース

Aさんは、マジメに仕事をこなしています。

仕事のミスも少なく、とても信頼できるスタッフです。

院長先生は、これまでの仕事ぶりから、Aさんには新たな仕事を一つ任せてみようと考えました。

さっそく、その意向を伝えることにしました。

スタッフ「私は、今の仕事が自分に合っています。これ以上、他の仕事はできないし、難しい仕事は自分にはできません」

院  長「そんなに難しくないよ。それに少しは違う仕事を覚えたほうがキャリアアップにつながるから、Aさんにとってもプラスになると思うよ」

スタッフ「えっ、でも……?」

院  長「もちろん、給与はその分アップするよ」

スタッフ「別に給与には不満はありませんので、今のままでいいです」

 

さて、院長先生はどう思われたでしょうか?

なぜAさんがそのような応対をするのでしょうか?

その答えは、Aさん自身のことをよく理解してみないと、結局のところわかりませんが、そこには意外な理由が隠されていたりするのです。

今回は、その中のよくあるケースとして“トラウマ”を紹介しましょう。

 

2:学習とトラウマの関係

トラウマとは、古代ギリシア語(trauma)の「傷」の意。

比喩的に心の傷を負っている場合、トラウマがあるというように使われます。

実は、過去のトラウマが、その人の考え方や行動に強く影響を及ぼすのです。

人は、経験を通じて学習します。

学習とは、ある経験を通じてモノ・コトに対する認識が変わることをいいます。

たとえば、人前でスピーチをして、大失敗をしてしまった(経験)とします。

その時その人は、次に失敗しないためには、リハーサルを十分にしておくことが重要であることを学習したとします。

すると、その人は、それ以後に人前でスピーチを行う場合には、事前にリハーサルを十分に行うようになります(認識と行動の変容)。

リハーサルを十分に行ってスピーチが成功すれば、自分自身に対する信頼が高まります。

これを随伴性認知といいます。

随伴性認知は、未知なることや新しいことにチャレンジするために必要となります。

しかし、これと逆に非随伴性認知があります。

スピーチで大失敗した経験から、“人前でのスピーチは自分には向いていないから、二度とやらないようにしよう!”という学習も成立するのです。

これがきっかけで“自分は無理に物事を引き受ける必要はない、失敗するだけだから”という人になってしまうことになります。

こんな人には、いくらスピーチをお願いしても、きっと断られるでしょう。

 

3:理解してあげることがモチベーション向上につながる

院長先生がやる気がないと感じられるスタッフの場合でも、それは過去のトラウマがそのようにさせているのかもしれません。

では、どうしたらよいのでしょうか?

たとえば、冒頭のAさんの事例で説明すれば、Aさんがそのように考えている理由(難しい仕事を拒む理由など)を、次の1、2のステップのイメージで聞き出してみましょう。

1 トラウマとなっている過去の学習経験を上手に聞き出す。

2 その時の心の傷となった状況や、その人の(つらい、悲しい、悔しい)気持ちや感情を理解し、共感する。

1、2まですすむことができれば合格です。

2が上手にできたときは、相手が感極まって涙する場合がよくあります。

このとき、院長先生としては、上手に聞き出せたと考えてよいでしょう。

 

人は、自分自身のことを理解・共感されることで欲求が満たされ、それによってモチベーションが高まっていくのです。

院長先生が、Aさんのトラウマを上手に聞き出して、理解・共感することができれば、Aさんの涙が乾いたと同時に、「でも、せっかくですからやってみます!」という言葉が出てくるかもしれませんね。