2009年11月16日
みなさんこんにちは。
株式会社ブライソン経営研究所の山田です。
「やる気を引き出す褒め方」に引き続き、これから3回にわたって「やる気を引き出す叱り方」をテーマに取り上げていきます。
今回は、やる気を引き出す叱り方の“大前提”について説明していくことにします。
1.叱るのはリスクをともなうから躊躇してしまう!
院長先生もきっとそうだと思いますが、人を叱るという行為はできれば避けたいものです。
それは、叱ることで、相手との人間関係に溝ができてしまうかもしれないと考えるからです。
褒める場合に比べて叱る場合には、こうしたリスクが考えられるために躊躇してしまう場合が多いうようです。
しかし、叱ることは、後述の“大前提”に忠実であれば、まず躊躇する必要はありません。
2.“叱る行為”の目的をハッキリさせる
まずは、叱る行為の目的を明確にしておきましょう。
みなさんはどのような時に叱るのでしょうか?
スタッフの患者に対する対応がよくないとき、出勤時間に遅れてきたとき、約束を守れなかった時などなど……、状況はさまざまだと思います。
では、何のために叱るのでしょうか?
それは、患者に対する対応が悪ければ良くしてほしい、時間に遅れたのであれば二度と遅れないでほしい、約束を守れないのであれば今度から守ってほしい、と思うから叱るはずです。
つまり“スタッフの考え方や行いを正したい!”から叱るわけで、そこにはスタッフの成長を期しているわけです。
院長=経営者であれば、当然スタッフを育てる義務がありますから、仮に自分が100%できていないことであっても、スタッフの成長のために叱らなければなりません。
ですから、叱ることに躊躇する必要はないのです。
むしろ、叱らないほうが問題だといえます。
ただし、院長自身がスタッフ以上にしっかりできているほうが、叱った相手に対して説得力があることはいうまでもありません。
また、叱り方にもやり方がありますので、それについては次回以降に譲ることにします。
3.叱るだけで(内面的な)やる気を引き出すことはできない
叱り方を説明する前に、もう一つ大切なことをお伝えしておきます。
それは、叱るだけでは、スタッフのやる気を引き出すことはできないということです。
実際、院長から叱られたことが悔しくて頑張るスタッフはいます。
では、なぜ頑張るのでしょうか?
それは、院長に認められたい、褒められたいからです。
ここがポイントです。
叱った後のフォローとして、成長ぶりを認めてあげないと、スタッフのやる気は高まらないのです。
ここで(良く知られていますが)ハーロックの実験をご紹介しましょう。
*ハーロックの実験**************************
小学校で5日間続けて、毎日テストを受けてもらうという実験をしました。
毎日のテストは、前日のテスト結果をフィードバックしてから受けてもらいます。
実験ではそのフィードバックの仕方に違いをつけて行いました。
ここでは、その中の“褒める群”と“叱る群”の実験結果について説明をしましょう。
“褒める群”は、前日のテスト結果の善し悪しにかかわらず、褒めてから次のテストを受けさせるというもの、“叱る群”は、テストの結果にかかわらず叱ってから次のテストを受けものです。
結局“褒める群”は、2日目から5日目までテストの成績が伸びていき、5日目にはもっとも高い成績を上げることになり、“叱る群”は3日目までは成績は伸びたのですが、4日目、5日目になると、成績は下がっていきました。
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“褒める群”の子供たちは日増しに学習意欲が高まったのに対し、“叱る群”は3日目までは“叱られる”ことを避けるために、とりあえず努力したにすぎないのです。
成績は実際に伸びても、“いくら努力しても叱られるだけ、結局、認めらない、褒められない”という環境の中では、やる気が生まれないということです。
私も以前、本件に関する調査をしたことがありますが、結論をいえば、上司に叱られるということと、部下のやる気には相関がみられませんでした。
4.叱ると褒めるがワンセット、これ叱るときの大前提
スタッフを育てるために行うのですから、問題があったら躊躇なく叱ってください。
しかし、それには大前提があります。
それは、叱った後には必ずフォローをすることです。
もっとも基本的なフォローは、スタッフの成長ぶりを認める・褒め言葉を投げかけることです。
たとえば、患者さんに対する対応がふさわしくないことを叱ったのであれば、本来どのような対応をすべきか教えます。
そして、それをスタッフが実際にきっちりできるようになったら、“今日の対応は良かったですよ”と、必ず成長ぶりを取り上げて褒めてあげることです。
このように、“叱る行為”とは、叱ることと成長ぶりを褒めてあげることが、ワンセットではじめて効果があるのです。
*次回から2回にわたって、効果的な叱り方について説明していくことにします。