2012年08月07日
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第2回目は「医師優遇税制」についてお話ししていくことにします。
ほとんどの先生が「医師優遇税制」という言葉を聞かれたことがあると思います。
正確には「措置法(第26条)」といい、簡単にいうと、医師と歯科医師は、年間の保険収入が5,000万円以下の場合、概算で経費を計算できるという制度です。
計算例を見ていただければわかりやすいと思います。
◆A歯科医院:保険売上3,500万円 自費売上+雑収入500万円(売上合計4,000万円)
経費合計2,400万円
まず、「措置法」が使えるかどうか判定します。
3,500万円≦5,000万円ですから、A歯科医院は、措置法の計算ができます。
次に、措置法を有利不利の判定をします。
(1) 措置法を使わないで計算した場合の利益
:4,000万円-2,400万円=1,600万円
(2) 措置法を使って計算した場合の利益
〔1〕保険収入に対する概算の経費を下の表から求めます。
A歯科医院の保険売上3,500万円は、3)の区分ですから、
3,500万円×62%+290万円=2,460万円が概算軽費になります。
〔2〕自費に対する経費を求めます。実際の経費をもとに、売上合計のうち
自費の占める割合で計算します。
2,400万円×500÷4,000=300万円
〔3〕経費の合計は、
〔1〕2,460万円+〔2〕300万円=2,760万円
よって利益は、4,000万円-2,760万円=1,240万円
(3)有利不利の判定
A歯科医院の利益は1,600万円>1,240万円で、措置法を使ったほうが、利益が約360万円減り、有利となります(税額でいうと税率30%の場合、約100万円の節税になります)。
※なお、実際の計算はもう少し複雑ですので、顧問の税理士さんに相談してください。さらに今回は、措置法についてもう少し掘り下げていきます。
措置法は、第1回で紹介した、お金の出入りを伴わない節税にあてはまり、その中でもかなり効果の高いものになります。
上例の場合、実際に経費を2,400万円しか使っていないにもかかわらず、2,760万円が経費になっています。
つまり、差額の360万円を「措置法を利用しますよ」と申告書に書き、計算書類を添付するだけで、経費にオンできるわけです。
利益率が高い医院、つまり「節約志向」の歯科医院であれば、メリットが出る可能性が大きいといえます。
実際の経費が、上記で計算した概算経費の2,760万円を超える場合は、措置法を使うメリットはありません。
また、注意していただきたいのが、年間の保険売上が5,000万円を1円でも超えると適用が受けられなくなるという点です。
ですから、節約志向で経営していた場合、その少ない経費で申告することになり、利益が大幅に増えてしまいます。
明らかに5,000万円を超えないという先生なら利用を検討したほうがいいですね。
個々で留意すべきことは、節約志向では「下向きのマインドになりやすい」ということです。
歯科医院の場合、積極的に投資をしていくことが、医院の成長につながると私は考えています。
実は、弊社のお客さんは、措置法の利用が非常に少なく、利用されているのは全体の約1%です。
売上が伸びていくにつれて、措置法を使うよりも、多くの自由に使えるお金を医院に残すことができる仕組みをとっているからです。
もちろん、成功の定義は人それぞれです。
売上を上げること、医院の規模を大きくすることだけが成功ではありません。
成功とは「自分が思い描いたとおりの人生を歩むこと」なのです。
自分がどうなりたいのかを考えた上で、制度を利用するという考え方を持つことが大切です。
※今回のメルマガは、平成24年度6月1日現在の税制によっています。
デンタルクリニック会計事務所
所長 山下 剛史
http://www.dentax.jp