2012年07月18日
こんにちは、デンタルクリニック会計事務所の山下です。
今回から「今から始めよう歯科医院の節税対策6つのポイント」と題し、6回に分けてお話します。
「決算間近、今年は利益がかなり出そう。このままでは税金が!」とばかりに節税したつもりが、あとで通帳を見たら、必要なお金がなくなっている……。
こういった状況を「節税貧乏」といったりします。
何ともおかしな言葉ですね。
節税をしようと思うがあまりに、肝心のお金がなくなってしまったというわけです。
節税はあくまで「手段」であって、けっして「目的」ではありません。
節税の目的は、「自由に使えるお金を増やし、そのお金で医院の未来を創ること」です。
その目的に合った質の高い節税をする必要があります。
では、「節税貧乏」から脱出するためには何をすればよいのでしょうか?
今回は、そのために必要なものを3つご紹介します。
税金の計算は、簡単にいうと、(収入-経費)×税率=税額で計算されます。
つまり、収入を減らすか、経費を増せば税金は減るというわけです。
また、儲け(収入-経費)が増えるほど、税率も上がる仕組みになっています。
個人にかかってくる所得税と住民税を合わせた税率の区分は、段階的に15%から50%まであります。
たとえば、100万円の経費を使った場合、節税になる金額は
(1)15%の税率の先生は:100万円×15%=15万円
(2)50%の税率の先生は:100万円×50%=50万円 となります。
50万円-15万円=35万円となり、同じ100万円の支出でも、節税効果が大きく異なることがおわかりいただけると思います。
とくに、(1)の先生は、15万円の節税のために、手元から100万円が出てしまいますので、(2)の先生以上に、その経費が本当に医院に必要なものであるかをよく考えていただく必要があります。
節税には【その1】のようなお金の出入りを伴うものの他に、お金の出入を伴わないものもあります。
お金の出入りを伴わないものとは、医院の状況に応じて届出書などを提出するだけで、節税ができるというものです。
手元にお金を残しながら節税できるので、非常に効果的です。
これには、計算の仕方を変更するものや、国が推進している政策に合致するものなどさまざまなものがあります(これらについての詳細は、次回以降でご紹介します)。
ご存じの先生も多いと思いますが、「専従者給与」という院長先生から奥様などのご家族に給与を支払える制度があります。
多くの場合、この制度でかなりの節税が可能となります。
ただし、金額設定にはバランスが必要です。
金額が多くなれば、奥様の所得税や住民税が増加し、結局、世帯全体で見てみると、節税ができていないというケースも考えられるからです(社会保険の扶養から外れてしまうことも考えられます)。
さらに、実は節税すればするほど問題になることがあります。
それは、「借入」をする場合です。
設備投資など、まとまった借入が必要になることもあるでしょう。
その際、金融機関から借入しなければなりませんが、金融機関は、貸付の際に、利益が継続的に出ているかも見ています。
税金が減ったのはいいですが、利益が出ていないと、借入ができないということもあり得ます。
3つのポイントを紹介しましたが、これらは、簡単にできるものではありません。
やはり、顧問の税理士さんと協力して行っていくことがベストです。
ここで重要なのは、税理士さんと「ビジョン・計画が共有できていること」です。
医院の増患、採用、設備など、どこが問題になっているのか分析し、その解決のために、いつ、いくらのお金が必要になるのかという計画です。
これが、節税貧乏にならないためのアクションプランです。
ぜひ税理士さんとのコミュニケーションを大切にしていただき、先生のビジョンを共有していただくことをおすすめします。
デンタルクリニック会計事務所
所長 山下 剛史