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歯科医院にお金を残すノウハウ【6】仕組み化~院長不在で回る仕組みをつくる

2011年09月20日

この連載では、歯科医院専門の数字の専門家から、ぜひ知っておいてもらいたい歯科医院にお金を残すノウハウを、6回にわたってご紹介しています。最終回は、医院の仕組み化を取り上げます。

<どうして多くの先生が1億円の壁を突破できないのか?>

お金を残す最後のステップ「仕組み化」についてお話ししていきます。「仕組み化」とは、ひと言でいえば「院長不在で回る仕組みを作ること」です。売上規模でいくと、年間売上1億円がひとつの目安となります。この規模になってくると、ドクターが院長1人で医院を経営していくことに限界が生じてきます。そこで、勤務のドクターを入れて、仕組み化をしていく必要があります。ところが、多くの先生がこの「仕組み化」に失敗し、1億円の壁を突破することができません。その理由は大きく分けると3つあります。個々に説明していきましょう。

<「商品」=「院長」になってしまっている>

理由の1つめは「商品」=「院長」になってしまっていることです。基本的に、歯科医師という仕事は、労働集約型のビジネスモデルです。これは、私のような士業事務所もまったく同じです。お客さん、つまり患者さんは何を求めて医院に来るのか?それは、治療ではありません。院長なのです。つまり、院長が商品になってしまっているのです。そのため、患者さんからすると、院長が治療してくれないことは、非常に不満に思ってしまうわけなのです。

<代診の先生が自分と同じぐらいできると思い込んでいる>

理由の2つめは、代診の先生への過剰なる期待です。多くの先生が、代診の先生が自分と同じぐらいできると思い込んでいます。私は、院長先生の40%ぐらいできれば合格ラインだと思っています。そこからは、教育して育てていくしかないのです。しかし、売上が1億円弱の医院の場合、人もギリギリで経営していることが多く、教育に時間を割いている暇などないので、ますます悪循環に陥ってしまいます。そして、せっかく教育して育ってきたと思ったら開業や、転職等で退職されてしまいます。それが続くと、もうドクターを雇用することをあきらめてしまいます。

<現場の仕事を手放すのが怖い>

最後の理由が、現場の仕事を手放すことへの恐怖感です。院長が一番偉い理由、それは一番腕のいいドクターだからです。そのため、院長は現場に出て、治療をしてこそ、スタッフみんなから認められる存在だと思っています。そのため、現場の仕事を手放すことには大きな恐怖感があります。代診の先生が行った治療に満足できず、「おまえそんなこともできないのか!」と自分でやり直してしまう、そんな腕のいい自分が大好きなのです。これではいつまで経っても、代診のドクターは成長しません。

<医療法人化で「家業」から「企業」へ形を変える>

では、どのようにして「仕組み化」をしていけばよいのか?そのひとつの解決策が、私は「医療法人化」だと考えています。前回のメルマガでもお伝えしたように、医療法人化のひとつのメリットは、節税が上げられますが、実は他にもいろいろなメリットがあります。この「仕組み化」においても、法人化は非常に有効です。たとえば、個人の場合、医院に残っているお金は個人のお金ですから、いくらでも自由に使うことができます。ところが、医療法人化すると、医院のお金を勝手に使うことはできません。もし、医院のお金を院長の個人的な用途で使えば、あとでそのお金を医院に返金するという処理をとらなければならないのです。もちろん、個人の時に比べると、面倒かもしれません。しかし、こうすることで、医院のお金と個人のお金をしっかりと分けることができ、院長はその医院の一スタッフとして給与をもらうということになります。法人化することで、一番腕のいいドクターとしての自分を、マネジメントできる経営者として俯瞰して見ることができます。

これ以外にも医療法人化にはいろいろなメリットがありますが、逆にデメリットも少なからずありますので、顧問の税理士さんと相談し、それらをすべて理解した上で検討していただきたいと思います。