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今日からできる患者対応のポイント【3】患者さんを診る前にスタッフが知っておくべき歯科用語

2016年02月01日

こんにちは、東京都港区開業、天川デンタルオフィス外苑前の院長の天川由美子です。

このメルマガでは、「今日からできる患者対応のポイント」をテーマに、
現在の私が考える一歯科医院の院長としての想いとともにお伝えしていきたいと思います。

これまでの2回では、初診患者さんからの予約電話に対する受け答えについて、
そして初来院時の受付の対応でスムーズなコミュニケーションをとるためには、ある程度マニュアル化しておく重要性についてお伝えしました。

今回の第3回では、いよいよ歯科の知識が必要になる場面、すなわち診査や治療の説明を想定し、
知っておくべき歯科用語について考えてみたいと思います。

(1)院内で歯科用語を統一しよう

私は、あるスタディグループに所属しています。

初めてその会に参加して先生のプレゼンテーションを聴いた時、英語混じりの単語の意味がわからなくて、ちんぷんかんぷんでした。

もちろん、プレゼンの内容なんて頭に入ってきません。

またスタッフが、働き始めた頃や新しい先生のアシスタントにつくことになった時、
「難聴になっちゃったかなと思うことがある」と言っていたことがあります。

同じようなことがみなさまの医院でも起こってはいないでしょうか。

これらは、その言葉を理解していないために耳に入ってきても頭の中には入ってこない現象です。

歯科の専門用語や保険用語にもいろいろな言い方をする人がいます。

たとえば、「C処」です。これは「カリエスの処置」という意味ですが、
これがコンポジットレジン修復なのか、インレーの印象なのか、「C処」だけでわかるのでしょうか。

診療の際、その場で指示されて材料を取りに行くよりも、あらかじめ準備しておくほうがアシスタントのイメージトレーニングもできます。

アポイントをとる時から、どの部位のどのような処置をするのかを記載してくことをお勧めします。

また、歯科医師が数名いる歯科医院では、材料を指す言葉が違うこともあります。

ボンディング材を塗布するものも、「スポンジ」「マイクロブラシ」「アプリケーター」などさまざまです。

それぞれの医院で言葉を統一しておきましょう。

私も言葉が出てこなくて時々「あのマトリックス」「そこの引き出しに入っているもの」と言ってしまうことがありますが、
“あ・うん”で通じる人はごくごく稀ですので、お互い気をつけましょう。

(2)患者さんの口にされる用語と実際の歯科用語は異なる

実際の歯科用語と、患者さんが口にされる用語は異なります。

私は、患者さんに説明する時には少し歯科用語を使ったほうがいいと思っています。

それでは、ここから知っておくべき歯科用語、とくに患者さんへ説明する際に必要な用語を中心にご紹介していきます。

以下、左が患者さんの言葉、右がカルテなどに記載する歯科用語、で書いていきます。

〔1〕問診時
できる限り詳細に患者さんの悩みや希望を、患者さん自身の言葉で話していただきます。(実際の話し方や聴き方については次回述べます)

〇部位
 ・上あご……上顎
 ・下あご……下顎
 ・前歯(まえば)……前歯(ぜんし)
 ・奥歯……大臼歯

歯式については、スタッフ間で「右上4番」などと保険用語で言うのはいいと思いますが、この言い方は日本だけです。

また最近はパソコンにメモ書きする医院も増え今後ペーパーレス化は進むと思いますが、キーボードで歯式の縦横の棒を書くのは難しいと思います。

正しくは「右側上顎第一小臼歯」ですが、これも長いので当院ではFDI方式で#14とメモしています。

〇痛みの種類
 ・冷たいものがしみる……冷水痛
 ・温かいものがしみる……温熱痛
 ・甘いものがしみる……甘味痛
 ・歯ブラシなどを当てると痛む……擦過痛
 ・噛むと痛い……咬合痛
 ・押すと痛む……圧痛
 ・叩くと痛い……打診痛

など、種類にもいろいろあります。

また、
 ・何もしなくても痛む……自発痛
 ・鈍い痛み……鈍痛

などや、いつ痛むのかも聞いたほうがいいでしょう。

〇主訴や希望
主訴や希望は、患者さんの言葉を記録することが大切ですが、スタッフ間では歯科用語を用いるほうが情報伝達がスムーズだと思います。
 ・歯を白くしたい……ホワイトニング希望
 ・歯並びが悪い……歯列不正
 ・前歯の隙間……ブラックスペース
 ・前歯が出ている……前歯突出感
 ・きれいな歯にしたい……審美修復希望

〔2〕診査
当院では、初診時には問診と診査のみを行います。

治療を希望される方は全員、口腔内写真の撮影、全顎のデンタルエックス線写真撮影、プロービングは最低診査項目です。

そのほか、スタディモデルを採得することもあります。

〇写真撮影
 ・歯のデジカメ写真……口腔内写真(当院では5面と言っています)
 ・レントゲン写真……デンタルエックス線写真、オルソパントモ

写真というと、エックス線写真と思われる方が多いので「記録のためのデジカメ写真」と説明しています。

エックス線写真は、基本的には全顎的に撮影します。

全体的なチェックを希望されるか、エックス線撮影を希望されるかを必ずおうかがいします。

〇歯周病の検査、プロービング
歯ぐきの深さを測る検査、歯肉の検査などいろいろな言い方があると思いますが、
「歯周病」という言葉はほとんどの方がご存じなので、だんだんこの言い方になってきました。

より詳しい説明を求める方には、図をお見せしたりして説明しています。

スタッフによると、歯肉が腫脹していたりする歯周病の写真よりも、イラストのほうがこわくなくていいそうです。

〇審美的診査
審美修復希望の場合は、審美的な評価も必要になります。

患者さんには、「お顔のどの位置に歯があるかというのを写真で評価します」と説明し、次の写真を撮影します。
 ・お顔の写真……顔貌写真(正面観、側貌)
 ・歯を合わせて口を閉じてもらう……閉口時
 ・歯を離して楽な状態……下顎安静時
 ・思いっきり笑った状態……フルスマイル 

中切歯の切縁の位置と口唇との関係などは模型だけではわからないので、正中の向きや前歯の見え方など審美修復治療においては欠かせない情報です。

〇歯の構造について
診査が終わり、次に状態を説明することになります。

以下は、患者さんによく使用する歯科用語です。

歯が骨に直接くっついていると思っている方や、歯髄腔の中に血管や神経が通っていて栄養補給しているのをご存じない方は多いと思います。

歯と歯周組織の構造については簡単に説明できるといいでしょう。
 ・エナメル質:歯の表面で体の中でもっとも硬い組織。無機質でできている
 ・象牙質:エナメル質の中にある有機質でできた組織。刺激を受けた歯髄からの指令で、第2象牙質、第3象牙質を形成する
 ・歯髄:歯の中心にある歯髄腔の中にある、いわゆる歯の神経
 ・セメント質:歯の歯根側表面にある歯槽骨とよく似た組織
 ・歯根膜:歯と歯槽骨をつないでいる組織
 ・歯肉:歯槽骨表面を覆っている粘膜、血管が無数に通っている
 ・歯槽骨:歯肉に覆われて歯を支えている骨

(3)スタッフには用語だけでなく使用理由も理解してもらう

今回は、患者さんとの会話に用いる簡単な歯科用語について考えてみました。

他にも、病名や解剖学的な用語など、覚えるべき言葉はたくさんあります。

そして、スタッフはその先生の得意な分野の用語を覚える必要があるでしょう。

当院であれば、エンドや接着に関する材料や用語については、とくにしっかり覚えてもらいます。

「なぜ、この材料を使うのか?」までを理解してもらわないと、
もしメーカーが変わった時にまた覚え直さないといけなくなり、頭で整理できなくなってしまうからです。

次回は、当院における実際の会話術についてご紹介したいと思います。

東京都港区開業・天川デンタルオフィス外苑前
天川由美子
⇒ http://www.amakawa-do.com/