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リコール率を上げるアポイントの取り方

2011年09月05日

ある時、私が担当している患者さんのリコール率を、過去3年間にわたって調べてみました。
その結果、平均は95%を超えていました。

予想よりもはるかに高い数字であり、真面目に通ってくださる患者さんに感謝の言葉しかありませんでした。
来院目的が、定期的なクリーニングである場合や、今までもメンテナンスに通っていたという患者さん以外は、治療が終了した後も、口腔の健康を維持するために定期的な来院をおすすめしても、「痛い時だけ」来院することになるケースが多いですよね。
ホームケアはもちろん大切ですが、私は診療室で行うプロフェッショナルケアでサポートしていかなければ、健康な口腔を守ることは難しいと日々感じています。
そのため、多くの患者さんがメンテナンスに通ってくださるように、いくつかの工夫をしています。
今回はそのひとつ、アポイントを取る上での工夫をお伝えしたいと思います。

(1)治療終了後の第1回目のアポイントは1ヵ月後にする

数ヵ月後の予定はわからないので、「予約は電話で!」といっても、アッという間に時間はすぎ、気がついたら1年経っていたという経験は、歯科診療以外で考えると、みなさんも経験があるのではないでしょうか?
患者さんも、定期的に歯科に通う習慣がついていない場合、最初の定期検診・メンテナンスのアポイントは忘れたり、先延ばしにしがちです。
私は1回目のアポイントは1ヵ月後にとってもらうようにしています。
1ヵ月後の予定なら立てやすく、キャンセル・変更は少なくなります。
きっかけができると患者さんは通院しやすいようです。

(2)担当する場合は自己紹介、もしくは担当歯科医師から紹介してもらう

メンテナンスを今まで受けてなかった患者さんは、何をされるかわからないという不安もあるようです。
治療終了時か第1回メンテナンス来院時に、歯科衛生士という職業・名前、メンテナンスでは何をするかをきちんと説明しましょう。
大事なことは、今後、自分が担当し、一緒にやっていきましょうということを伝えることです。

(3)時間を必ず守る

忙しい現代人にとって、時間管理は重要事項です。
アポイント時間を守ることは当然ですが、私は終了時間も守るように気をつけています。
「歯医者さんは待たされる」というイメージを、多くの患者さんが持っています。
痛みを取るためには「待つ」ことも我慢できますが、健康を維持することは目に見える変化ではないので、「毎回待たされる」「終わりの時間が読めない」では、来院が遠のいても仕方ありません。
「30分で終わります」「1時間の予定でいらしてください」など、患者さんの予定が立てやすいように心がけましょう。

(4)無断キャンセル・予約変更はカルテ(衛生士業務記録)に記録する

キャンセルの場合はその理由を記録する、遅刻・予約変更、あるいはこちらから変更をお願いした場合なども、記録を残し対応していきます。
いずれの場合でも、記録することで、その方の時間のとらえ方、メンテナンスへの期待度などが次第にわかってきます。
また、体調不良なども把握でき、来院した時の会話につながり、そして、信頼につながっていくようです。
なお、診療室の理由で変更していただいた場合は、歯科衛生士だけではなく、受付でもひと言お詫びをいってもらいます。

(5)アポイントは個人に合わせたバリエーションをもつ

歯科衛生士の立場では、次回は3ヵ月後のアポイントをおすすめしたくても、患者さんは1ヵ月後にきたい、4ヵ月後にきたいという希望を持っていることもあります。
私は必要性を説明したうえで、できるだけ患者さんの希望をお聞きするようにしています。
また、期間だけではなく、1回にかかる時間も短時間で終わらせたい方、ゆっくり丁寧にやってほしい方、それぞれに対応しています。
理想を追求するあまり、無理をさせて来院が途切れるよりも、ご本人の希望に沿ってアレンジしていくことが必要です。

(6)続けられる環境をつくる

アポイント期間と同様に、メンテナンス内容も個人に合わせて調整しています。
ホームケアを頑張っている方には結果を褒めること、ホームケアが苦手な方はとにかく来院を続けて一緒にケアしていくこと、忙しい方には頑張らなくてもサポートしますよと伝えること、歯科治療に恐怖心がある方には痛みを伴う処置はさけること・・・ など、患者さんに無理をさせないように心がけています。
時にはチェアタイムの半分くらいはおしゃべりになってしまいますが、歯科が苦手だった方も何年も定期的に通ってくださっています。

(7)「私は特別!」という意識を持ってもらう

上記に書いたようなことを守っていくと、メンテナンスに来院した患者さんは待つこともなく入室でき、「お風邪はいかかですか?」という会話だったり、「また○月ですね、お待ちしています」という挨拶だったり、治療で通院中の患者さんとは違う対応ができます。
これは患者さんにとっては「特別扱い」のような優越感がでてくるようです。
治療で来院する方と差別するわけではありませんが、この小さな優越感は、通院を続けることに一役買ってくれるはずです。

今回もけっして難しいことではありませんが、みなさんがもしお気に入りのお店で大切に扱われ、嫌な思いをしなかったとしたら・・・、また同じお店で買おうと思うのではないでしょうか? 患者さんのリコール率を上げることも、実は費用もかからず基本的な関係を築けばできるのだと思っています。