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緊急時対応マニュアルを活かしていますか?

2011年08月17日

3月11日・・・、みなさんはどうしていましたか?

私の住む関東地方も、これまでに経験のない大きな揺れを感じ、「何が起きているのか?」「どうしたらいいのか?」など、冷静な判断が必要なのだと思いつつ、実際にはわからないことばかりでした。後日、落ち着いてみると「患者さんの不安を軽減するような誘導ができていたのか」「患者さんはきちんと帰宅できたか確認すべきだった・・・」など、反省も多々ありました。

平成19年4月より医療法の一部改正に伴い、医療安全体制を確保することが義務づけられました。診療室における医療安全確保・院内感染対策についてのマニュアル作成、事故発生時の報告と改善策の実施など、各診療室でしっかり取り組んでいることと思います。

今回の災害時に「マニュアル」は、それが活かされたでしょうか?とりわけ緊急時対応マニュアルは、作っただけでは意味がありません。内容が身についていて、活かされることが大事です。今回は何もできなかった自分を反省しながら、「マニュアル」をもう一度考えてみたいと思います。

以前、病院歯科に勤務していたときに、「緊急時対応」からはじまり、「院内感染対策」「機械・器具の使用方法(取り扱い説明書を含む)」「受付業務」「始業・就業時作業」・・・など、さまざまなマニュアルがありました。

とくに印象的だったのは「緊急時対応マニュアル」についての医長の考え方でした。患者さんの誘導、機械の安全確保、カルテの扱い、他科との連絡、指示系統などが詳しく書かれていて、スタッフ一人ひとりがそれぞれの担当者になっていました。さらに、担当は定期的に変わり、誰がどの担当になっても対応できるようにシステムは作られていました。

そして、ミーティング時に突然「○○さんの担当は何ですか?最初にすることは何ですか?」と聞かれるのです。もちろん、ミーティング内容はまったく違うことでしたが、「非常事態はいつ起こるかわからないのだから、いつでも対応できるようになっていなければマニュアルの意味がない」というのが医長の考えでした。何かが起きたとき、自分は責任もって何を行うのかを、即座に答えられるように教育されていました。

当時は、集中してミーティングしている最中に、違う質問で中断されることが不快に思ったりもしましたが、今回の大震災で、このことがいかに大切なことだったかを思い知らされることになったのです。「緊急時対応マニュアル」「災害時対応マニュアル」が用意されていても、緊急時にページをめくって読んでいては意味がありません。マニュアルを深く理解し、いつも頭のどこかに置いておき、即座に対応できる――つまり「身につける」まで熟知しておくことが必要だったのだと思います。

また、「緊急時対応マニュアル」に限らず、他の「マニュアル」も理想だけを追求しても意味がなく、必要なこと、できることを記して、誰もが理解しておかないと活用できているとはいえません。

そのためには、スタッフ全員で意見を出し、必要な項目をあげ、わかりやすい表現で書くことをおすすめします。写真・イラストなどで表現することもわかりやすい工夫となります。是非、もう一度、診療室全体でマニュアルを検討してみてください。

先日、テレビ番組で東京ディズニーリゾートの対応を報道していました。最悪を想定した非常時の訓練を1年に180回行っていたとのことでした。

その結果、スタッフの90%がアルバイト雇用だったにもかかわらず、「安全と安心のために何をするか」を自分の判断で行動することができたのだそうです。そして、それはマニュアルを超えた行動だったということです。

基本はマニュアルでしっかり把握し、訓練を重ねることで、マニュアルを超えた判断ができ、安全と安心のための行動が全スタッフによってできたのです。二度と同じことは起こらないといわれている災害時には、このように基本がわかっていること、そして臨機応変な対応が要求されることは、私たちの仕事でも一緒なのだと思います。

最後になりましたが、このたびの東日本大震災で亡くなられた方々に慎んで悔やみ申し上げますとともに、被災者の方々に心よりお見舞い申し上げます。1日も早い復興をお祈りし、また、元気な私たちはできることを精一杯やらないといけないのだと思っています。

何かが起きたとき、一番にすることは何ですか?あなたがすることは何ですか?油断から大きな事故や犠牲が生じないように考えていきたいと思います。それが、患者さんから信頼を得ることにつながるはずです。