2010年06月21日
今回は、人間の心理傾向を把握して、来院者をファン化する取り組みをお伝えします。
日常の診療での会話に、ほんのわずかな変化を加えることで、来院者満足度を高め、さらにスタッフの関係円滑化や院内の活気をアップさせ、結果的に増患につなげていくものです。
■人間は、行動に対する理由を聞く習性・願望がある
コピーの順番を先にかわってもらう場合、どのような表現をするとその承諾率が高いかについて、社会学者エレン・ランガーによる図書館でのコピーに関する実験では、A、B、Cの3つの依頼の表現に対して、承諾率の調査結果が次のようになりました(、ロバート・チャルディーニの『影響力の武器』より)。
A「すみませんが、ちょっと急いでいるので、先にコピーを取らせてもらえませんでしょうか?」
B「すみませんが、先にコピーを使わせてもらっていいですか?」
C「すみませんが、コピーを取らなくてはならないので、先にコピーを使わせてもらえませんか?」
Aの表現の承諾率が93%であったのに対して、Bの場合の承諾率は60%となっています。
意外で興味深いのは、Cの表現に関しても93%の承諾率があったという結果です。
このことから、ロバート・チャルディーニは「人間は、行動に対する理由を聞く習性・願望がある」ことに言及し、「……なので、……します」という表現が、その理由の精度以上に重要であることを指摘しています。
歯科医院の診療の現場でも、理由を告げるだけで、来院者の印象を変えることができる場面は多々あります。
たとえば、治療中に患者のもとを離れる際、何もいわずに離れることで、来院者の満足度が低下しているケースをよくみかけます。
こうした場合、何も告げられないで待たされている患者側は「自分は放置されている」と感じてしまうものです。
その時に「これから、○○の治療をしますので、○○をとってきます。少々お待ちいただけますか」という表現を付加するだけで、来院者の印象は大きく改善します。
これはスタッフ間でも同じです。
「○○さん、3番チェアに入ってもらっていいですか」と依頼だけするよりも、
「○○さん、私は5番チェアに入るので、3番チェアに入ってもらっていいですか」というように
“なぜ、そうしてほしいのか”を表現したほうが、スムーズに気持ちよく聞き入れてもらえます。
■プラスの表現に、もう一言プラスの表現を加えると
たとえば、セラミック・クラウンが入ったときに、「○○様、素敵ですね」と、セット時に来院者を褒めることは大事ですが、それにもう一言加えて、次のような表現ができるようになれば、さらに来院者の満足度は向上していきます。
「素敵ですね。口元の透明感で表情がより一層明るく見えますよ」
プラスの表現にプラスの表現を加えることで、来院者はよりイメージがふくらみ、治療サービスに対するプラスの印象が強く残るようになるのです。
このように、ちょっとしたお声がけを加えるだけで、来院者の満足度は向上し、口コミが確実に増加します。
満足した顧客は最高の広告媒体です。
日常の診療の中で、来院者に対して、何となく、機械的に発せられている一言一言に注意を払い、をさらなるファンづくりを推進していただきたいものです。