2014年06月13日
これまで、尊敬語、謙譲語その1、謙譲語その2、丁寧語、美化語、クッション言葉、間違い敬語についてお伝えしました。
今回は対応に苦慮するときの表現を取り上げました。
表現には、ストレートな表現と、遠まわしにいう表現があります。
ストレートに表現せず、遠まわしにいうことが、丁寧であると一般的には考えられます。
が、一方、遠まわしな表現では伝わらない人もいます。
まず、遠まわしな表現をし、相手が理解できないようであれば、少しずつ、明示的に表現してみましょう。
前回に続き、テストをしていくことにします。
次の表現は、ストレートな表現ですか?
それとも遠まわしな表現ですか?
ストレートな表現には( )の中にAを、遠まわしな表現には( )の中にBを書き入れてみましょう。
(1)( )電話の声がよく聞こえないので、大きな声で話してください。
(2)( )電話が遠いようでございます。
(3)( )こちらでは、携帯電話は使用しないでください。
(4)( )携帯電話の電波がよく入る場所にご案内いたします。
(5)( )当院は完全予約制です。予約がないと拝見できません。
(6)( )当院は完全予約制です。よろしければ、ご予約を承ります。
では、それぞれについて解説していきます。
(1)(A)電話の声がよく聞こえないので、大きな声で話してください。
ストレートな表現です。
このようなストレートな表現は、教育の行き届いた職場では、避けられてきました。
(2)(B)電話が遠いようでございます。
遠まわしな表現です。
最近は、携帯電話でのやり取りも多く、場所によっては、電波が途切れてしまうこともあります。携帯電話の場合は「電波の状態がよくないようです」「電波が届いていないようです」などの遠まわしな表現もあります。
(3)(A)こちらでは、携帯電話は使用しないでください。
ストレートな表現です。
このままの言い方ですと、患者さんを不快にしてしまうオソレがあります。
ことに最近は「~しないでください」という表現が避けられる傾向にあります。
ストレートに表現する場合でも、「ご遠慮いただけると助かります」などの表現が無難です。
(4)(B)携帯電話の電波がよく入る場所にご案内いたします。
遠まわしな表現です。
このほか、「おかけになって電話できる場所にご案内いたします」とか、「静かな場所にご案内いたします」などの案内が可能であれば、患者さんに利益をもたらしますので、不快にさせるオソレが軽減します。
(5)(A)当院は完全予約制です。予約がないと拝見できません。
ストレートな表現です。
その患者さんの診療を断るつもりであるとき以外は使えません。
予約のない患者さんを診療することができない、と伝えているだけなのですが、診療拒否をしているような印象を与えます。
(6)(B)当院は完全予約制です。よろしければ、ご予約を承ります。
遠まわしな表現です。
今日、いますぐは診療できないけれど、予約をしてくれれば、診療しますという姿勢が伝わります。
遠まわしな表現が好まれてきましたが、最近は、明示的にストレートにいわないと伝わらないケースも見受けます。
一般に、年配の人には遠まわしな表現が定着していると思いますが、個人差がありますので、まずは遠まわしに表現してみる、それでも伝わらない人には、わかりやすく、求める言動を提示してみる、という順番が無難でしょう。
「~してください」「~しないでください」という表現を好まない人もいますので、
「~してくださると助かります」
「~していただけますか?」
「~していただけませんか?」
という表現を使う方法もあります。
さらに、クッション言葉(恐れ入りますが、あいにくでございますがなど)を使い、相手に配慮していることを、優しい声、穏やかな表情で伝えれば、対応に苦慮する場面でも、トラブルを発生させることは避けられるでしょう。
NHK学園専任講師
山岸 弘子