2010年07月05日
こんにちは。デンタルクリニック会計事務所 山下です。
今回の連載では、歯科医院の数字の専門家の立場から、皆さんにぜひ知っておいてもらいたい「歯科医院の数字のポイント」を、6回にわたってお話していくことにします。
第1回目は、歯科医院の平均的な数字を取り上げます。
私はよくお客様から、「歯科医院の平均的な利益率ってどれくらいなんだろう?」と聞かれます。
利益率とは「売上高に占める利益の割合」のことをいいます。
先生の医院の利益率は何%ぐらいでしょうか?
歯科医院の利益率を知る前に、まずは歯科医院のお金の流れを理解しておきましょう。
●歯科医院の平均的な変動費率は20%
歯科医院の売上は、保険の売上と自費の売上に分かれます。
開業すると、レセプト点数で30万点、つまり保険で300万円を目指します。
これ以外に、たとえば自費の売上が100万円あれば、売上は「300万円+100万円=400万円」になりますね。
そして、ここから「変動費」がマイナスされます。
変動費とは、売上が上ればそれにともなって上る経費のことです。
具体的には「材料代」と「技工代」のことをいいます。
売上高に占めるこの変動費の割合のことを「変動費率」といいます。
この変動費率は、歯科医院の場合、約20%前後になります。
一度、先生の医院の決算書をチェックしてみてください。
決算書上、この変動費は、歯科医院の場合、基本的に「売上原価」と同じになります(30%を超えると、少し変動費の割合が高いといえます)。
そして、売上高からこの変動費を差し引いたものを「粗利(あらり)」と呼びます。
売上高が400万円で、変動費が80万円だった場合、変動費率は80÷400×100=20%、粗利は400-80=320万円となります。
つまり、いくら売上を上げても、絶対に売上の20%くらいは材料代や技工代に消えてしまいます。
【ポイント】
★売上高 = 保険売上 + 自費売上
★変動費 = 材料代 + 技工代
★変動費率 = 変動費 ÷ 売上高(平均的な変動費率…20%)
★粗利(売上原価)= 売上高 - 変動費
●歯科医院の労働分配率は25~35%
この粗利から今度は「固定費」が出ていきます。
固定費とは、売上が上ろうが下がろうが、毎月一定で出ていく経費のことです。
歯科医院の代表的な固定費は「人件費」「家賃」「リース料」などですが、その他、材料代と技工代の変動費以外の経費はすべてこの固定費と考えていただいて結構です。
歯科医院の人件費は、粗利の25~35%前後になることが多いと思います。
この粗利に占める人件費の割合のことを「労働分配率」と呼びます。
これに対して、売上高に占める人件費の割合は「人件費率」と呼びます。
粗利が320万円で、人件費が80万円の場合、労働分配率は「80÷320×100=25%」となります。
そして、人件費以外の固定費が120万円あった場合、歯科医院の利益は「320-80-120=120万円」となります。
利益率とは、売上高に占める利益の割合のことを指しますので、この歯科医院の利益率は「120÷400×100=30%」となります。
歯科医院の利益率は、私の経験上、20~30%になる医院が多いと思います。
【ポイント】
★労働分配率= 人件費 ÷ 粗利(平均的な労働分配率……25~35%)
★人件費率 = 人件費 ÷ 売上高(平均的な人件費率……20%前後)
★利益 = 粗利(売上高 - 変動費) - 固定費
★利益率 = 利益 ÷ 売上高(平均的な利益率……20~30%)
このように、平均的な歯科医院の数字を知っておくことは、歯科医院経営において重要なことですので、ぜひ頭に入れておいてください。
なぜなら、平均値が知らないと、どこに問題があるのか、まったくわからないからです。
次回は、これらの数字の改善策を見ていきたいと思います。