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歯科医院の経営数字 ここがポイント【3】第3回 数字から読み取る歯科医院の改善策とは≪人件費編≫

2010年08月02日

こんにちは。デンタルクリニック会計事務所 山下です。

第3回目は、人件費関連の改善策についてお話します。

 

●人件費を削減しても人件費率は変わらない

多くの歯科医院で問題となってくるのが、この「人件費」です。

歯科医院の平均的な人件費率は20%前後であると、第1回のメルマガにてお話しいたしましたが、では、20%を超えて高すぎる場合には、どのようにすればよいのでしょうか?

最初に出てくる解決策が「人件費の削減」なのですが、「人件費を削減したところで、人件費率は変わらない」というのが私の持論です。

どういうことかといいますと、どんな業界であっても、人への投資というのがもっとも効率のよい投資なのです。

人件費率が高すぎるからといって、安易にスタッフの解雇を考えてしまうと、非常に悲惨な結末を迎えることが多いのです。

まず、スタッフを解雇することで、他のスタッフの院長を見る目がとても厳しくなります。

「どうして院長は○○さんを辞めさせたんだ!?」

「○○さんがかわいそう!!」

そして、スタッフと院長の信頼関係は揺らぎだし、医院の雰囲気は非常に悪くなってしまいます。

実は、こういった雰囲気(空気感)というのは、医院にお見えになる患者さんに伝わるのです。

そうなってしまうと、一層医院の売上げが落ちてしまうことになり、結局、売上高に占める人件費の割合は、スタッフを解雇する前とあまり変わらなくなってしまうのです。

いったん採用したのであれば、院長としてその採用に責任を持って教育して、一人前に持っていく必要があると思います。

 

●思い切って人を増やし、それ以上の売上を上げる努力をする

スタッフの人件費率が高すぎる場合には、分子である「人件費」の削減を考えるのではなく、分母である「売上高」のアップを考えるべきです。

今までの私の経験上、人を入れればその人件費以上に売上げが上がります。

私は、歯科衛生士やドクターを雇用して売上げが下がった、もしくはほとんど変わらなかった医院さんを見たことがありません。

ですから、「まだ少し人を入れるのは早いかな~」くらいのタイミングで、スタッフの採用を考えるほうが賢明なのです。

 

●人件費率が20%だと医院は大きく発展しない

私のクライアントさんでも、勢いのある医院さんに共通しているのは「人件費率が他の医院よりも高い」ことです。

これは、次々と人を雇っていくので、いつまで経っても人件費率が減らないのです。

その代わり、売上高はどんどん伸びていきます。

よくいわれる「歯科の適正な人件費率は20%」というのは実は誤りで、「歯科の平均的な人件費率が20%」というのが正しいのです。

つまり、人件費率20%というのは、伸びている医院と伸びていない医院の区別なく、すべての医院の平均値であり、医院を発展させようと思えば、人に投資をしてそれ以上の売上げを上げていく、という戦略を取っていくべきです。

ここにいかに早く気がつき、勇気を持ってそれを実践できるか、これが歯科医院経営発展のポイントとなります。

 

●間接人件費は「時間を金で買う」と心得る

歯科衛生士さんやドクターは売上げに直結してきますが、歯科助手や事務長などの間接人件費は売上に直結しません。

この場合には、「時間をお金で買う」というイメージになります。

たとえば、歯科助手が入ってくれたことで院長の時間が空く、事務長が入ったことで院長の時間が空くとなれば、その空いた時間で、院長はもっと生産的な仕事を行うことができるようになります。

経営とは「今の売上げを上げながら、未来の売上げを作る」ことをいいます。

1日のうちに「未来の売上げを作る時間」をどれだけ確保することができたかを考えてください。

そして、その時間がないのであれば、ぜひ勇気を持って「人」に投資をしてみてください。