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歯科医院の経営数字 ここがポイント【2】第2回 数字から読み取る歯科医院の改善策とは≪変動費編≫

2010年07月20日

こんにちは。デンタルクリニック会計事務所山下です。

第2回目は、変動費率が高すぎる場合の改善策についてお話します。

 

●変動費率が高すぎる場合の改善策

前回のメルマガで、歯科医院の変動費率は20%前後になることが多いとお話しました。

では、変動費率が高すぎた場合、つまり粗利率が低すぎる場合には、どんなことが原因として考えられるでしょうか。

一般的にいいますと、

「材料や技工を高い業者さんにお願いしてしまっている」

「材料や技工で高いものを使ってしまっている」

「スタッフが材料のムダづかいをしてしまっている」

などが考えられますが、これらが原因となっていることは非常に少ないものです。

材料店さんや技工所さんも、最近は競争が厳しくなってきており、仕入先によって仕入単価が変わるということは少なくなっています。

また、スタッフに「材料をムダづかいしないように!」と伝えることは大切ですが、これによって大幅に変動費率が改善されることはほとんどありません。

実は、原因は他のところにあるのです。

変動費が高い場合の原因の多くは、

「治療内容自体の変動費率が高い」

「在庫の管理ができていない」

この2点に集約されることがほとんどです。

 

●メインテナンス中心の「農耕型」に移行して変動費を改善する

変動費が高い原因のひとつめは「治療内容自体の変動費率が高い」ことです。

これは簡単にいえば、治療(とくに補綴)中心の「狩猟型」医院経営になっているということです。

補綴をともなう治療については、どうしても金属代などの材料がかかって、自然と変動費率は高くなる傾向があります(最近は金属代の高騰も、変動費をかさ上げする原因となっています)。

また、自費のインプラント治療などが多い場合も同じことがいえます。

このような治療中心の医院経営の形態を「狩猟型」と呼びます。

「狩猟型」の医院経営では、常に新患を追い求めなければならず、そのため、毎日患者数の不安との戦いを強いられることになります。

これを解決するための方法は「メインテナンス(予防)中心の「農耕型」診療スタイルに移行していくこと」です。

歯科衛生士さんが行うSRPやTBI、ホワイトニングなどは、材料などがほとんど不要ですので、粗利率は高いはずです。

ですから、歯科衛生士さん中心のシステムができてしまうと、経営は非常に安定したものとなります。

一度来院いただいた患者さんを生涯の顧客化(クライアント化)してしまえば、毎月患者数の減少を気にする必要がなくなるからです。

新患を常に追い求めなければならない業態を「狩猟型」とすれば、このようにメインテナンスで継続的に来院してもらえる業態は「農耕型」といえます。

私は、クライアントさんにひとつの目安として「メインテナンスへの移行率」を70%を目標としていただいております。

しかし、なかなかこれは厳しい数字です。

しっかりとメインテナンスの重要性を伝え、歯科衛生士の担当制を導入するなど、いろいろな取り組みをしなければ達成できない数字だと思います。

しかし、ここが徹底できるかどうかが、今後の歯科医院経営において非常に重要となってくるのです。

この「農耕型」の医院経営に移行するためには、歯科衛生士さんの採用・教育、そしてメインテナンスに使うチェアの導入など、ある程度の投資も必要になってきます。

 

●在庫管理は「仕組み化」で解決する

もうひとつの原因は「在庫の管理ができていない」ことです。

在庫があるにもかかわらず、仕入を行ってしまっているため、材料仕入が増えてしまうということが起こります。

これを解消するためのポイントは「在庫管理方法を仕組み化してしまうこと」です。

たとえば、この材料は、残り何個になればどこからいくつ発注をするのかなどをリスト化し、それをスタッフに徹底していきます。

これさえ徹底しておけば、「棚卸」の際も非常にスムーズに計算ができます。

いったい今、うちの医院にどれだけの在庫があるのか、これをいつでも把握できる状態をつくっていただきたいと思います。