MAIL MAGAZINE メールマガジン

歯科医院の経営数字 ここがポイント【4】第4回 人件費率から決める論理的な賞与の決め方

2010年08月17日

こんにちは。デンタルクリニック会計事務所 山下です。

第4回目は、論理的な賞与の決め方についてお話します。

 

●昇給や賞与の予算は「人件費率」を元に決定する

私が、顧問させていただいている歯科医院の先生からのご質問で一番多いのが「人件費」に関するものです。

とくに、昇給や賞与の時期になると、「山下先生、今年はいったいいくら賞与を出せばよろしいでしょうか?」という質問が多く出てきます。

おそらく、多くの先生にとって、この昇給や賞与が一番頭を悩ませる問題であり、この時期が一番ストレスをかかえる時期ではないでしょうか。

しかし、この昇給や賞与について明確な基準を持って支払っている医院さんは少ないのが現状です。

そこでお勧めなのが、「売上に応じて自動的に人件費が決まる仕組みを作っておく」ことです。

そうすれば、昇給や賞与の時期に、いったい今年はいくらにすればよいのかと、頭を悩ませることも少なくなります。

そして、私が顧問先の先生にお勧めしている方法が「人件費率」を元にした予算決定です。

つまり、昨年度の決算の数字などから、年初に「今年の人件費率は○%」と決めておき、スタッフ全員に発表するのです。

そして、その予算の枠内で昇給や賞与を決定していきます。

たとえば、昨年度の売上が6,000万円で、年間の人件費(給与・賞与を含む)が1,200万円だったとしましょう。

すると、昨年の人件費率は、1,200万円÷6,000万円=20%となります。

この数字を元に今年の「目標人件費率」を決定します。

この目標人件費率は、基本的には昨年度の人件費率と同じか、それ以上のものを設定するのがベストです(なぜなら、医院が大きくなるにつれて、間接人件費も増えるからです)。

たとえば、目標人件費率を昨年同様の20%に設定したとしましょう。

そして、今年の1~6月までの売上高が4,000万円になれば、今年の夏の賞与については、4,000万円×20%-(1~6月までの給与総額)で求めることができます。

毎月の給与総額が100万円だった場合、夏の賞与の原資となる金額は、4,000万円×20%-(100万円×6ヵ月)=200万円となります。

この場合には、単純に夏の賞与と冬の賞与が同じと仮定した場合で計算していますが、冬の賞与が多い場合には、夏の賞与を減らして、その余ったお金を冬の賞与の原資として使うことも可能です。

この辺りは、毎月の売上高と人件費の金額をエクセルで予算管理すれば、非常にわかりやすいのではないでしょうか。

 

●「目標人件費率」から賞与を決めることのメリット

「目標人件費率」を元にして賞与を決めることの最大のメリットは、基準が明確で、スタッフでも簡単に理解できるということです。

もし、このような基準がなければ、「何だか今年は頑張って利益が出ている感じがするのに、賞与はあまり変わらなかった!」「院長のさじ加減一つで賞与が決まっている!」といった不満が出ることもあり、それが院長の一番のストレスになってしまうのです。

また、人件費率で全体の賞与などが決まるのであれば、忙しくなってもその分自分たちに還元されるために、少ない人数でも頑張って乗り切ろうという意識が生まれます。

 

●人件費率を予算として賞与を決めることのデメリット

「目標人件費率」を元に賞与を決める方法にはデメリットもあります。

1つめが、利益がたくさん出たら、スタッフにもたくさん還元しなければならないので、固定の賞与に比べると、キャッシュフローが減る可能性があることです。

ただし、これはデメリットととらえるか、スタッフのモチベーションが上がるのであればそれでよいととらえるかの違いでしょう。

2つめは、人が不足したときに、人員を補充しようとしても、スタッフが人件費率を意識してしまい、人への投資が思ったようにうまくいかないことが発生します。

こうしたことを避けるためには、拡大のための人の増員について、人を入れたことによる売上増も加味した上で売上目標を立て、その売上に適正な目標人件費率を設定するようにすることです。