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【3】前歯部における支台歯形成のヒント

2017年08月07日

皆さん、こんにちは。

東京都千代田区で開業しています、土屋賢司です。

このメルマガでは、「形成・印象が”格段に”うまくなるヒント」と題して、
日常臨床における筆者なりのヒントをお伝えできたらと考えています。

前回は、臼歯部の支台歯形成について解説しましたが、
今回は前歯部でのポイントについて、みていきたいと思います。

●前歯を支台歯形成する際のポイントとは?

前歯部の支台歯形成では、まず、以下の5つについて考慮する必要があります。

[1]唇舌側面とも3面に形成する。
[2]第1面は、歯の長軸または着脱方向と平行な歯頸部寄りの面で、唇舌側および近遠心側を6°のテーパーで仕上げることで最大の保持形態を得る(舌側1面は基底結節の位置により困難)。
[3]第2面は、歯冠の中央部に形成し、歯の外形に相似させる。
[4]唇側第3面は、切縁に内側傾斜をつけ削除量を十分にとり、とくに前歯部審美性への配慮をする。
[5]フィニッシュラインはラウンデッドショルダーまたはスロープドショルダー(最近はナイフエッジが多い)を付与し、補綴物の強度と色調を考慮する。

つづいて、実際の形成時の流れとポイントを見ていきましょう。

まず、切端面の形成として、審美性の要求および強度のため、対合歯との間に最低2㎜のクリアランスを設けます。

そしてパイロットグルーブを入れ、削除していきます。

唇側面および口蓋側面の形成としては、
バーの太さ約半分を目安に第1面と第2面にパイロットグルーブを入れます。

口蓋側面の第1面もこのときグルーブを入れると、
立ち上がりが平行になりやすくなります。

付与させたパイロットグルーブをつなげるようにしながら、
慎重に唇側面の形成を行います。

その際、第1面が倒れすぎないように注意しましょう。

口蓋側面の第1面に付与したパイロットグルーブをつなげていきます。

前歯部において保持力維持のためには、この部分はもっとも大切なので、
倒れすぎないように注意することがポイントとなります。

ここで重要なポイントをお伝えしましょう。

唇舌側にパイロットグルーブを入れる際、
唇側と舌側のバーはややアンダーカット気味に入れるのがコツになります。

唇側の方向と平行にバーを舌側にもっていくと
結果的に舌側の第1面がルーズになり、クラウンの維持に支障が生じます。

立ち上がりすぎたものをなだらかにすることは可能ですが、
なだらかにしてしまったものをシャープにするのは困難です。

つづいて、隣接面の形成ですが、
最後に残った近遠心のアイランドを削除します。

最初は細いバーを使い、アイランドを残した状態でカットし、
隣接面を傷つけないようにし、また軸面が倒れすぎないよう注意します。

なお、隣接面の支台歯形成時には
マージンフィニッシュが深くならないように注意が必要です。

隣接面が存在すると、
削り出す際にバーを隣在歯に当てないように注意しすぎるため、
横に当ててしまうことがあります。

そのときに歯肉縁下に入れて形成してしまうと、
その歯軸を補正しようとした際に、
当然のことながらバーは内側に入ってしまいます。

その結果、前回解説した
「Jシェイプ」のマージンロケーションになる可能性があります。

それでは遊離しているため形成としては不適切であり、
ラウンデッドショルダーに戻す必要があります。

いったんJシェイプで形成された形成面は、
その淵の部分を削る時は必ずマージンがかなりの深さまで下がってしまいます。

とくに歯間乳頭のサルカスは深いため、縁下にバーが入りやすいのです。

また、形成しているとき、
エアーや注水の圧によって歯肉が反対側に動いてしまう可能性があり、
そのためマージンの見極めを誤ってしまうことがあり注意が必要です。

コツとしては、隣接面を削るときは可及的に縁上で形成することといえます。

つづいて、口蓋側第2面の形成においては、
対合歯とのクリアランスをチェックしながら第2面の形成を行います。

辺縁部分をあまり削りすぎると形がとりづらくなります。

ポイントとしては、凹面に沿ってバーを動かすことが重要です。

凹面に沿わずにまっすぐに削ってしまうと
近遠心の辺縁隆線をすべて落とすことになり、
支台歯の強度および支台歯携帯が薄っぺらくなってしまいます。

仕上げとしては、補綴物の適合性向上のため、すべての面角は丸く、
スムーズな面に仕上げ、シャープな部分がないようにします。

バーは目の細かなファインバーを使用するとよいでしょう。

フィニッシュラインは、補綴物の種類などによって形態を変えます。

たとえば、オールセラミッククラウンの場合ならば
ラウンデッドショルダー、メタルセラミックスの場合はスロープドショルダーとなります。

最近はジルコニアの色調が改善されたことにより、色調に問題のない支台歯であれば
ジルコニア単体のマージンサーフェスも可能になるため、フィニッシュラインはナイフエッジで仕上げることが多いです。

なお、前歯部の場合、歯肉縁下にマージンを設定するため圧排糸は必須です。
 
次回は、印象採得のポイントについて解説します。

土屋歯科クリニック&Works
土屋 賢司
http://www.tdc-andworks.com/