2017年07月18日
皆さん、こんにちは。
東京都千代田区で開業しています、土屋賢司です。
このメルマガでは、
「形成・印象が”格段に”うまくなるヒント」と題して、
日常臨床における筆者なりのヒントをお伝えできたらと考えています。
第2回となる今回は「支台歯形成」、
なかでも臼歯部における形成のポイントについて解説したいと思います。
●臼歯を支台歯形成する際のポイントとは?
臼歯部の支台歯形成では、
まず、以下の5つについて考慮する必要があります。
[1]基本的に、機能側では3面、非機能側では2面の形成とする。
[2]第1面は、歯の長軸または着脱方向と平行な歯頸部寄りの面で、最大の保持形態を得る。
[3]第2面は、歯冠の中央部に形成し、歯の外形に相似させる。
[4]第3面は、機能咬合面における強度と抵抗形態として咬合面寄りに内側傾斜に形成する。
[5]フィニッシュラインは、機能側ではアクセンチュエイテッドシャンファー、非機能側ではシャンファー形態を付与する。
つづいて、実際の形成時の流れとポイントを見ていきましょう。
●頬舌側軸面の形成
頬舌側軸面の形成として、
第1面から第3面までパイロットグルーブを形成します。
非機能側咬頭は2面で形成します。
このとき、それぞれのパイロットグルーブを互い違いに入れることがポイントになります。
つぎに、付与したパイロットグルーブをそれぞれつなげるようにしながら、
慎重に軸面の形成を行います。
この際、削り過ぎないように細心の注意を払いましょう。
臼歯形成が”格段に”うまくなるヒントとして、第1面のパイロットグルーブを歯頸部マージンのやや縁上に入れることが挙げられます。
それぞれのグルーブどうしをつなげるときに、
つい縁下に入ってしまうことを防ぐためです。
もう1つのヒントは、グルーブの深度はバーの半径よりも浅めにすることです。
これも先ほど同様、グルーブどうしをつなげるときに、
つい深く形成してしまうことを防ぐためです。
本コラムの第1回でも解説しましたが、第1面(ファーストプレーン)の角度は6°テーパー(片側3°テーパー)を意識しましょう。
この角度を傾斜しすぎるとクラウンの維持の消失につながります。
●咬合面の形成
咬合面の形成では、
機能咬頭では1.5~2.0mm、
非機能咬頭では1.0~1.5mm
の目安で咬合面と相似形にパイロットグルーブを形成します。
咬合面のグルーブは、裂溝や咬頭に放射線状に相似に入れる必要があります。
中心窩においても同様の深さのパイロットグルーブを付与することを心がけます。
これが浅いと結果的に中心窩のクリアランスが少なることを認識しましょう。
付与したパイロットグルーブをつなげるようにしながら、慎重に咬合面の形成を行っていきます。
その際、咬合面が平らになりすぎないように注意しましょう。
●隣接面の形成
軸面、咬合面の形成が終わったら、最後に隣接面の形成になります。
残った近遠心のアイランドを削除します。
細いバーを使用し、アイランドを残した状態でカットして隣接面を傷つけないようにします。
頬舌側の移行部は自然に仕上げるようにしますが、保持力の維持のため、
隣接面には第2面、第3面をつくらないことがポイントです。
この隣接面形成のときに注意したいのが「Jシェイプ」です。
隣接面を削合しないように気を付けるあまり、通常より内側を削ってしまい、
遊離エナメル質(Jシェイプ)を形成してしまうことがあります。
それを防ぐためには、まず細いバーを用い、
やや傾斜させてアイランドを残しながら削り、
徐々に太いバーに換えていく方法がよいでしょう。
最後に仕上げに入りますが、補綴装置の適合性を向上させるためには、
すべての面角は丸く、スムーズな面に仕上げて、シャープな部分がないようにします。
フィニッシュラインは、歯の植立環境や補綴装置の種類などによって形態を変えていきます。
メタルクラウンなら「シャンファー」、
メタルセラミッククラウンなら「スロープドショルダー」、
オールセラミッククラウンなら「ラウンデッドショルダー」が一般的です。
臼歯部の形成は、後方にいくほど当然形成がしにくくなりますが、
前回と今回のポイントをおさえながら、基本原則をきちんと守り、
ていねいな手技を心がけることがもっとも大切といえるでしょう。
次回は、前歯部の支台歯形成のポイントについて解説します。
土屋歯科クリニック&Works
土屋 賢司
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