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【4】印象採得で重要となる歯肉圧排のコツ

2017年08月21日

皆さん、こんにちは。

東京都千代田区で開業しています、土屋賢司です。

前回までは、臼歯部および前歯部の支台歯形成のポイントについて解説しましたが、
今回からは印象採得についてみていきたいと思います。

●印象採得で大切なこととは?

印象採得の目的は、支台歯形成によって設定したマージンを精密に写し取って、
その情報を正確に歯科技工士に伝えることです。

そして、印象採得で重要となるのが、歯肉圧排です。

歯肉圧排について解説を行う前に、まずは印象採得の流れをざっとみておきましょう。

まず、印象採得を行う当日、患者さんが来院したら歯周組織に炎症がないかを確認します。

同時に、マージンの確認も再度行います。

それらに問題ないようでしたら、歯肉圧排を開始します。

歯肉圧排法には、シングルコードテクニックと、ダブルコードテクニックの2つがあります。

前者を用いる場合というのは、主にサルカス(歯肉溝)がハイクレストのケースです。

そのようなときは、歯周組織として成熟しきっていない可能性がありますので注意が必要です。

ここでは、ダブルコードテクニックを例に挙げて解説します。

ダブルコードテクニックの利点は、印象採得時に一次圧排糸を残してあるため、
サルカス内の滲出液や血液をそれによって抑えておくことが可能となり、
汚染のないシャープな印象採得ができることです。

しかし、そのような印象採得をするには、
前述したように、印象前に炎症のコントロールがきちんとできていなければならないのはいうまでもありません。

では、実際のステップを解説します。

まず一次圧排糸挿入時のポイントとしては、
印象採得時はその圧排糸を外さずに行うため、
圧排糸を歯の円周サイズに合わせて過不足なくぴったりの長さで入れることが重要です。

円周サイズに対し、長くても、短くても印象はうまくいきません。

つづいて、二次圧排糸挿入時では、
その糸が一次圧排糸の上にくる二重の構造になるため、
印象時には上の糸のみを外して印象を行います。

先ほどの一次圧排のように歯の円周サイズにぴったり入ってしまっていると、
糸を取り除きにくくなるのは容易に想像がつくと思います。

そこでポイントとなるのが、二次圧排糸をピンセットで取りやすいよう、
あらかじめ「のりしろ」を出しておくことです。

細かい手作業ですが、その後の印象採得をスムーズに行うためのコツです。

さらにポイントとしては、二次圧排糸をサルカスに挿入する方向があります。

時計回りなら時計回り、反時計回りなら反時計回りと、
同じ方向に圧排糸を挿入しておくと、取り除く際に楽で、
印象がとても効率的なものになります。

●タイミングが重要

印象採得では、印象材の硬化を考慮し、
つねにタイミングを意識することが必要です。

アシスタントを2人つけられる場合と、1人しかつけられない場合では、当然方法も異なります。

前者では、圧排糸を外すと同時に印象材を盛っていきます。

術者がインジェクションタイプの印象材で支台歯を1本1本印象していくと同時に、
1人のアシスタントが二次圧排糸を取り除いていき、
もう1人のアシスタントは印象材の硬化のタイミングを見計らいながらトレーにボディタイプの印象材を盛ってきます。

しかし多くの医院では、
印象採得時に2人のアシスタントがつくのはあまり現実的ではなく、
ほとんどの場合、1人のアシスタントになるかと思います。

その場合は、部分ごとに印象材を盛っていく方法がよいでしょう。

すなわち、上顎の印象なら、右側臼歯部→前歯部→全顎→左側臼歯部と、部分ごとに印象する流れです。
 
印象採得は、まさに時間との勝負。

印象材の硬化時間なども考慮したタイミングが大切なため、
それぞれが自分の役割をきちんと認識したうえで、うまくチームプレーを行うことが印象採得成功への鍵といえるでしょう。

次回は、ダブルコードテクニックが格段にうまくなるヒントについてお伝えしたいと思います。

土屋歯科クリニック&Works
土屋 賢司
http://www.tdc-andworks.com/