2017年07月03日
皆さん、こんにちは。
東京都千代田区で開業しています、土屋賢司です。
昨今、CAD/CAM、歯科用CBCT、マイクロスコープなどデジタルデンティストリーが発展してきています。
歯科医療においては、機器の開発のように”変わるもの”もあれば、
一方でずっと”変わらないもの”もあります。
それは、多くの先人たちが言ってきたように、「基本の重要性」です。
そこで、このコラムでは、歯冠修復の精度を高めるうえの基本である「支台歯形成」と「印象採得」に主にスポットを当てて、
それらの手技が”格段に”うまくなるヒントを、私なりにお伝えしていきたいと思います。
●支台歯形成の基本原則とは
まず、歯冠修復前の最初のステップとして挙げられるのが、支台歯形成です。
そして、この支台歯形成が歯冠修復の結果を大きく左右します。
支台歯形成の際、改めて意識しておきたいのは、
一度削った歯質は戻らないという点です。
不可逆的な処置であることを認識したうえで、適切な形成量に基づいた正確な手技が求められます。
では、適切な支台歯形成とはどういったものでしょうか。
また、どのような点に注意すべきでしょうか。
以下に、支台歯形成の基本原則を挙げます。
1)正確かつ明確なマージンフィニッシュを付与する
歯冠修復ではなんといっても適合が大切です。
修復物のマージンが正確に支台歯に適合するよう、
支台歯形成時にはマージンフィニッシュを一線で仕上げることがポイントです。
修復物のタイプに応じて、マージンフィニッシュはシャンファー、
あるいは最近ではジルコニアの普及、進化に伴いライトシャンファーの形態を選択します。
2)修復物の維持または保持力、抵抗力を考慮する
「保持形態」とは、
修復物が着脱方向に離脱してしまうことを防ぐ形態を指します。
「抵抗形態」とは、
斜方向からの外力(咬合力)によって修復物が離脱してしまうことを防ぐ形態を指します。
それらの保持・抵抗力を増大させることで離脱を防止するのです。
そのためには以下がポイントとなります。
A.マージン部より歯冠長1/3以上の軸壁は、「片側3°」「両側6°」のテーパーで形成する。
B.修復物との接触面積を大きくするため、必ず歯と相似形にする。
C.できるだけ臨床歯冠長を長くとる。
それが不可能な場合は、付加的なグルーブ、ボックス、ホール等の形成により離脱経路を制限する。
D.マージン部と隅角部を除いて、必要以上に支台歯の形成面を研磨しない。
3)修復物の耐久性を考慮する
修復物の強度を高めるために、クリアランスを十分に付与することが大切です。
4)歯質をできるだけ保存する
MIの概念も浸透してきていますが、形成は”必要最小限”を心がけましょう。
そのためにも、あらかじめ最終修復物の外形を決定しておくことがポイントになります。
5)歯周組織に侵襲を与えないための配慮を行う
歯周組織に侵襲を与えないためにも、
形成のフィニッシュラインは「歯肉縁上」が好ましいのですが臨床上縁下に設定する必要があるケースは少なくありません。
もし歯肉縁下にフィニッシュラインを設定する場合は、
基本0.5~1.0mmが目安となりますが最近では少し深め(1.0~1.5mm)に設定する場合もあります。
歯肉のタイプを精査したうえで決定するようにしましょう。
そして、フィニッシュラインと骨頂までの距離が2.0~2.5mmより少なくなってはいけません。
6)生活歯の場合、歯髄にできるだけ配慮する
形成時、タービンの回転軸がブレていないかつねに注意を心がけましょう。
そして、十分な注水によって冷却を行います。
摩滅していないダイヤモンドバーを使用します。
生活歯と失活歯でバーを使い分けます。
ポイントは、圧をかけずフェザータッチで形成することです。
そして、可及的に短時間で形成していきます。
以上挙げた6原則を忠実に守ることが重要になります。
繰り返しになりますが、歯科治療では”基本原則”を守ることが大切なのです。
筆者が若い時、支台歯形成がうまくなりたいという思いから、
時間ができたときはとにかく歯列模型を使って形成の練習をしていました。
そのような小さな積み重ねをコツコツ行った当時の努力が、
今の筆者のベースとなっていると思っています。
さて次回からは、今回解説した基本6原則を踏まえたうえで、
支台歯形成の基本手技について臨床的なヒントをお伝えしていきたいと思います。
土屋歯科クリニック&Works
土屋 賢司
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