2017年09月19日
皆さん、こんにちは。
東京都千代田区で開業しています、土屋賢司です。
前回まで、支台歯形成から歯肉圧排、印象採得までのポイントについて解説しました。
いよいよ最終回となる今回は、過去5回でお伝えした内容をおさらいしつつ、
補綴治療の精度を上げるために私が日々気を付けていることについてお伝えしたいと思います。
第1回では、支台歯形成の基本原則について解説しました。
そして、以下の6項目が大切であるとお伝えしました。
・正確かつ明確なマージンフィニッシュを付与する。
・修復物の維持または保持力、抵抗力を考慮する。
・修復物の耐久性を考慮する。
・歯質をできるだけ保存する。
・歯周組織に侵襲を与えないための配慮を行う。
・生活歯の場合、歯髄にできるだけ配慮する。
つづく第2回では、臼歯部の支台歯形成のコツについて解説し、以下の5項目の重要性をお伝えしました。
・基本的に、機能側では3面、非機能側では2面の形成とする。
・第1面は、歯の長軸または着脱方向と平行な歯頸部寄りの面で、最大の保持形態を得る。
・第2面は、歯冠の中央部に形成し、歯の外形に相似させる。
・第3面は、機能咬合面における強度と抵抗形態として咬合面寄りに内側傾斜に形成する。
・フィニッシュラインは、機能側ではアクセンチュエイテッドシャンファー、非機能側ではシャンファー形態を付与する。
第3回では、前歯部の支台歯形成のコツについて解説し、以下の5項目の重要性についてお伝えしました。
[1]唇舌側面とも3面に形成する。
[2]第1面は、歯の長軸または着脱方向と平行な歯頸部寄りの面で、唇舌側および近遠心側を6°のテーパーで仕上げることで最大の保持形態を得る。
(舌側1面は基底結節の位置により困難)
[3]第2面は、歯冠の中央部に形成し、歯の外形に相似させる。
[4]唇側第3面は、切縁に内側傾斜をつけ削除量を十分にとり、とくに前歯部審美性への配慮をする。
[5]フィニッシュラインはラウンデッドショルダーまたはスロープドショルダーを付与し、補綴物の強度と色調を考慮する。
第4回および第5回では、歯肉圧排法における一次圧排と二次圧排について解説しました。
一次圧排では、圧排糸が歯肉溝円周にピッタリのサイズになるようにし、
二次圧排では圧排糸を取り除く前提で、つかみやすいように”のりしろ”をつけることがポイントでした。
第1回から第5回まで、
いずれも基本的な内容をお伝えしましたが、1つ1つの基本の積み重ねこそ、
歯科治療においてはもっとも重要なことといえます。
私が歯科医師になって30年以上が経過しましたが、
歯科医師になりたての20代の頃と比べると、この30年でさまざまな機器・器材が開発されました。
それでも、やはり基本的なことに変化はないと思っています。
先日、プレゼンテーションの整理をしていたところ、
自分が20代に支台歯形成を行ったときのスライドを見つけました。
それが、今とほとんど同じで驚きました。
当時は、時間があったらひたすら形成の練習をしたものですが、
その頃に身につけた感覚が今でも活かされています。
この連載タイトルにある”格段に”うまくなる最大のヒントは、
臨床を好きになれるかどうかだと思います。
歯科は努力すればするほど、その可能性が広がる分野であり、
99%の努力と1%のセンスだと思います。
このコラムが皆さんの明日の臨床に少しでもお役に立てたなら幸いです。
ありがとうございました。
土屋歯科クリニック&Works
土屋 賢司
⇒ http://www.tdc-andworks.com/