2003年07月07日
「なにを今さら、う蝕治療と修復処置」とお思いでしょうが、昔も今も歯を失う原因の1、2位はう蝕と歯周病です。
それもこの2つで90%を占めているのであれば、まさに口腔内の二大疾患といわれるのは当然と考えられます。
さて、う蝕と歯周病、全く異なる疾患でありながら、両者ともに口腔内の細菌が原因で、その細菌はプラーク(あるいはバイオフィルム)として歯間部、辺縁歯肉近辺に多く存在いています。
また、原因菌こそ異なるものの、その予防法はいずれも、各人が行うセルフケアと、定期的に歯科医院で行われるプロフェッショナルケアによるプラークコントロールが効果的であるといわれています。
さらに、う蝕治療後の適合の悪い修復処置が、歯周病を引き起こすトリガーとなることも知られているという事実を考えると、我々歯科医療人としては、ともかく、う蝕さえコントロールできれば、歯を失う率を極端に減少させることができるといってよいでしょう。
現在でも、口腔内に多くの修復物や欠損を抱える日本人の現状を考えると、いまだにう蝕は古くて新しい永遠のテーマなのかも知れません。
そこで、今回から10回前後にわたって、う蝕に対する処置方法について、若干の私見を述べさせて頂きます。
大学卒業以来既に30年以上が経過し、その多くを多少とも接着歯学に関与させて頂きましたが、そこで得られた最も大切なことは何であったとお思いですか?
初回からこの連載の結論をあえて述べさせて頂けば、象牙質う蝕は治らないこと、従ってエナメル質を可及的に保護しなければいけないこと、それでも象牙質が露出してしまったら、接着技術によってエナメル質機能を代替する樹脂含浸層による人工エナメル質を、生成させることが必要であると考えています。
これらについて次回から順次お話して行きたいと思っています。