MAIL MAGAZINE メールマガジン

誰でもいつでも取り組める歯科医院の経営改善【6】経営改善・改革を行う際の3つの視点

2013年06月28日

歯科医院の役割を患者さんの口腔の治療だけでなく、予防・健康増進、そしてより美しくという願望を実現することととらえると、歯科医院は患者さんを顧客と考え、対応することが、欠かせない時代になっています。

そのために、この連載では「顧客」という視点から、話を展開してきました。
そのほうが、社会にとって歯科医院がなくてはならない価値ある存在として認知されるはずです。
歯科医院が、今以上に社会的価値を高めるための改善・改革を行う際に必要な視点として、次の3つがあげられます。
1回から5回までの各テーマには、この3つの視点がその背景にありました。
3つの視点の精度をチェックしながら、改善・改革に取り組みましょう。

<経営を行う際に必要な3つの視点>
(1)経営戦略が構築されているか
(2)組織風土が醸成されているか
(3)経営管理が行われているか

(1)経営戦略が構築されているか――組織として進むべき方向が明確になっているか?

医院の方向性が明確になっていても、メンバー間で共有できていなければ意味がありません。
理念を達成するためには「院長がまた同じことをいっている」といわれるくらいにミーティングでは、毎回毎回同じことを言い続けましょう。

次に、理念達成のための戦略を具体的行動計画レベルまで落とし込みます。
目標が明確になれば、あるべき姿から逆算して足りないこと(目標からのプル思考〈将来から現在を考える〉が重要です)が見えてきますので、現状の問題や課題がわかりやすくなります。

抽出された問題点や解決すべき課題に対して、達成期限をつけて行動計画を作成します。

ただし、どんなに立派な計画ができても実践されなければ、何もならないのが経営です。
経営目的・戦略を達成するために、プル思考で考えられた行動計画を常に実践しながら、「できていない部分は、どうしたらできるようになるのか」「できているのであれば、さらに良くしていくためには、どうしたらよいのか」――このような実践の習慣によって、医院改善・改革が現実のものとなっていきます。

(2)組織風土が醸成されているか――チームとして目的を達成するに値する力を持っているか?

組織風土は、企業文化や社風と表現されます。
良い組織をつくりあげるための根幹部分であり、改善には時間を要します。

「1人ひとりが主体性を持って取り組む組織にしたい」
「変化に前向きな組織にしたい」
などのように、組織風土を改革したいと望んでも、短い期間で達成することは難しく、長い年月をかけて積み重ねた結果として生まれるものです。

良い組織風土づくりのポイントとして、根底に感謝の気持ちがあることが重要です。まずは、院長が率先して従業員への感謝の気持ちを表現すること、そして、スタッフの良いところに焦点を当て「褒める」文化をつくることがスタートです。

ただし、褒めるだけでは、プロとして厳しさの欠ける甘い組織になってしまうこともありますので、叱ることと褒めることのバランスが重要です。
意識して褒める部分を見つけようとしないと、叱ることばかりに重点がおかれます。
院長自身が、悪い点ばかり指摘する指摘マンにならない努力が重要で、褒める3に対して叱る1の割合が適切です。
このような習慣からスタートすることで、時間をかけて良い組織風土を醸成しましょう。

(3)経営管理が行われているか――組織の目的達成のために、正しい計画が適切な指標を持ちながら推進できているか?

客観的判断基準を持って経営することが、重要なことはいうまでもありません。
院長の感覚に依存した経営では、危機的状況の察知が遅れることにつながります。
指標への到達度を評価することで、自分たちの行動が正しいか否かの判断基準ができ、その結果、改善スピードが向上するのです。

利益や売上の目標管理に対して、スタッフが前向きでない歯科医院もあるようですが、売上はある意味、「お役立ち度」でもあります。
売上が大きいということは、多くの方々の役に立っているということです。
歯科医院の仕事は社会貢献的な意味合いが大きいのですから、売上が拡大しているということは、そのお役立ち度が大きくなり、社会への貢献度が増大しているということです。

経営改革をすすめる際に「知っていること」と「出来ること」は、まったく違うものであることを認識する必要があります。
知っているだけでは、何の成果も出ないのが経営です。
良い成果は、正しい知識・スキル、そして実践があって始めてあらわれるのです。

医院改善・改革に成功され、歯科医院の社会的価値を高める――それを実践するのは歯科医院の皆さまです。
今回の連載が何かひとつでも・経営改善・改革のヒントになればこの上なく喜ばしいことです。

 株式会社デンタル・マーケティング
 代表取締役社長
 寳谷 光教
 http://www.dental-m.co.jp