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歯の保存と接着の最新情報【5】CRかインレーか、選択する基準は?

2019年03月01日

これまで直接CR修復を中心にお話してきました。

私の臨床では、CR修復の適応範囲の拡大とともに間接修復の症例が格段に減っています。
メタルインレー修復は、年間数例(以下)といった具合です。
内側性窩洞について言えば、ほぼゼロに近いでしょう。
地域性もあるかと思いますが、メタルインレーは今後も減っていくことは間違いないと思います。

私がメタルインレーにしない理由はいろいろあります。
まずCRで対応可能な症例が増えたこと、CRの処置は1回で済みますが、インレーでは2回の来院が必要なことです。
最近の患者さんの白い歯に対する要求の高まりも理由の1つです。
CRによるう蝕治療では無麻酔が一般的ですが、メタルインレーの場合に窩洞形成時の麻酔は必須です。
そのほか印象採得や咬合採得、仮封などの煩雑な臨床操作、外注による歯科技工や再来院時のインレーの調整、セットなど、CRと比べると実に複雑です。
ここまでやって患者さんから満足してもらえればまだしも、金属の高騰もあってけっして割の良い仕事ではないと感じます。

セラミックインレーの場合、メタルインレーと比べれば患者満足度は高いでしょう。
セラミックインレーをセットする際には、デュアルキュア型レジンセメントを使うのが一般的です。
「デュアルキュア」とは、「光」と「化学」の両方で硬化することですが、象牙質にしっかりと接着させるのであれば光照射は必須です(図1)。

図1 パナビアV5(クラレノリタケデンタル)。

Tagamiら1)は、コンポジットレジンブロックを介して光照射した場合の光の減衰とセメントの象牙質接着性について調べています。
コンポジットレジン(エステニアC&B、クラレノリタケデンタル)の厚みを1mm, 2mm, 3mmと変化させて光強度を調べると、厚さ3mmのブロックではほとんど光を透過しません(図2)。

図2 コンポジットレジンインレーのセットでは十分な光照射が必須。

2種類のデュアルキュア型レジンセメント(パナビアF2.0とパナビアV5、クラレノリタケデンタル)を用いて、象牙質に対する接着試験を行ったところ、両セメントともに光の減衰とともに接着強さは低下しました。
一方、セメント間で比較したところ、パナビアV5はどの条件においてもより高い接着性を発揮しました(図3、4)。


図3 コンポジットレジンを介して光照射すると、光強度が減衰(文献1より)。


図4 コンポジットレジンの厚みがレジンセメントの象牙質接着性に影響(文献1より)。

参考文献
1.Tagami A,Takahashi R,Nikaido T,Tagami J.The effect of curing conditions on the dentin bond strength of two dual-cure resin cements. J Prosthodont Res 2017;61(4):412-418.

朝日大学歯学部 口腔機能修復学講座 歯科保存学分野歯冠修復学
二階堂 徹

 

 

一般的名称 歯科用セメントキット
販売名 パナビア V5
医療機器認証番号 226ABBZX00106000
医療機器の分類 クラスⅡ 管理医療機器
製造販売 クラレノリタケデンタル株式会社