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歯の保存と接着の最新情報【2】う蝕治療の前にやるべきこと

2019年01月17日

う蝕治療について、教科書や実習書を見て最近いつも感じるのは、う蝕の処置をする前の患歯の清掃であったり、着色やプラーク、歯石の除去について書かれていないことです。

誌面の制限上やもう得ないこととは理解しているのですが、学生の臨床実習や研修医の臨床研修などで指導する際、これから処置すべき歯の周囲にプラークがべっとりついていたりしてがく然とさせられることがあります。
そのため、指導する際には「歯のプラークは取ったの?」と尋ねることにしています。
「外科のオペをする時には必ず術野を消毒してきれいにするでしょ、歯科は外科だから同じだよね」というと、ハッと気が付いてくれることが多いです。

実際、う蝕の原因は細菌感染なのであって、まずはその原因である細菌をできるだけ減らすことから始めるべきです。
隣接面にたまったプラークをデンタルフロスでこすり取ってやると、結構歯肉から出血してくるような場合もあります。
しかし、プラークを除去しないまま、う蝕を除去したとしても、いざ隔壁を装着する段階で歯肉から出血してしまい、修復どころではないでしょう。
興味深いのは、術前にプラークを除去してやると、最初は赤く腫れて出血するような歯肉の炎症も、う蝕を除去して充填する段になると、かなり炎症が消退することです。
これまであまり歯周治療の勉強には熱心でなかった私ですが、いかに成熟したプラークの起炎症性が高いか、プラーク除去が重要かを身に染みて感じる次第です。

歯面の清掃には、ブラシコーンにポリッシングペーストをつけて用いていますが、歯をポリッシングすることによって着色が取れて歯本来の色を取り戻すことができ、シェードテイキングにもおおいに影響するところです。
ポリッシングは各社からさまざまなペーストが市販されていて、どの製品をお使いになっても結構です。
ただし、粗い研磨材を含むペーストであれば金属修復物の光沢がなくなり、細かい研磨材ではステインを取るのには効率が悪いです。
そのような経験から自然とペーストを選択するに至りました。
また、ペーストの選択については、フッ化物が含まれていると歯の耐酸性が上がって接着に悪影響を及ぼすのではないかとの懸念される向きもあります。
Nakamotoら1の実験によると、歯磨材の一般的なフッ化物濃度である900ppmF程度であれば、接着に影響を及ぼさないことがわかっていますが、より高濃度であるフッ化物塗布に用いるゲルなどでは9,000ppmFの高濃度フッ化物を含んでいて、接着に悪影響を及ぼすことが明らかになっています。
フッ化物配合ペーストで歯を磨いておけば、滑沢になってプラークが付着しにくくなるばかりか、耐酸性が向上してう蝕にもなりにくくなって一石二鳥といえます。
ただし、ペーストに含まれる研磨材はよく水洗して表面に残さないようにしないと、接着に影響する可能性があるので注意が必要です。

参考文献
1.Nakamoto A, Ikeda M, Hiraishi N, Nikaido T, Uo M,4, Tagami J. Effect of fluoride mouthrinse on adhesion to bovine root dentin. Dent Mater J. 2018;37(6):919-927.

朝日大学 歯学部 口腔機能修復学講座 歯科保存学分野歯冠修復学 
二階堂 徹