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地域包括ケアを支える次世代型歯科医院【5】医科歯科連携にチャレンジする歯科医師たち

2018年11月30日

医科歯科連携を提唱されていた大久保満男先生が日本歯科医師会会長に就任したのが2006年4月。

そして、日本医師会雑誌が「日常診療に必要な口腔ケアの知識」という特集を掲載したのが2015年6月号でした。
(図1)

慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科教授の小川郁先生は、その特集号の巻頭言にこう書いています。
「口腔ケアと言えば、当初は介護施設などにおける口腔清掃や誤嚥性肺炎予防のための口腔ケアの重要性が話題となっていた。
しかし近年、口腔ケアの疾病予防効果や全身健康の保持・増進効果に関するエビデンスが明らかになるにしたがって、口腔ケアの対象となる疾病も広がりを見せており、日常診療における口腔ケアの意義を再認識する必要性が高まっている。
(中略)これを機会に、日常診療における口腔ケアの意義と具体的な導入・実施法についての理解を深めていただければ幸甚である」。

10年で医科側の歯科に対する認識がここまで変わったのかを確認できる特集号でした。
しかし、医科の現場では特集号が出る前から変わり始めていたのです。
図2は弊社のクライアントである信愛整形外科医院(佐賀市、森永秀和院長)の院内掲示であり、私が2015年8月12日に撮影したものです。

そこには「介護にならない為の3大ポイント」というスタッフ手作りのポスターが掲示されていました。
ポスターには3大ポイントとして、(1)お口の健康(口腔)、(2)体をつくる(栄養)、(3)丈夫な足腰(運動)が図案化されていて、「『口腔』を健康にするエクササイズを紹介します」という言葉も表示されています。
歯科医院ではなく整形外科医院に掲示されていたことが新鮮な驚きでした。

信愛整形外科医院では毎年、春と秋に患者さんやその家族、地域住民向けに健康フェアを開催しています。
今秋の健康フェアは「ロコモ予防で健康長寿!」をテーマに、10月14日(日)にメートプラザ佐賀(旧佐賀勤労者総合福祉センター)で開催されました。

健康フェアのメニューの中には、添島絵美先生(歯科医師・こども歯並びセンター長)による「ロコモ予防とお口の健康とお化粧の不思議な関係」と題したミニ講座と「口から食べられる幸せをサポートするスキンケア教室」が含まれていました。
添島先生チームのスキンケア教室は大盛況で、健康フェアの責任者だった田中智史さん(理学療法士・信愛整形外科医院)は「これまでのフェアで行ったメイクやネイル教室はインストラクターに”やってもらう”タイプだったが、今回は参加者が楽しみながら自分でやってみるスタイルで、さらにそこからロコモ予防につなげるという企画は本当にすばらしかった」と喜んでいました。医科歯科連携はアイデア次第だということがわかる事例です。

また、日医雑誌第144巻・第3号には「摂食嚥下障害の治療と並行して行うことができて、低リスク、低コストの介入法として口腔衛生の改善と保持を目標とした口腔ケア」が取り上げられ、「今後、身体合併症を予防する先制医療として、高齢者の嚥下障害のスクリーニングと口腔ケアを医科歯科連携でできるように、社会的な体制づくりが望まれる」という記載もあります。

こうした背景に支えられて、耳鼻咽喉科との連携にチャレンジする歯科医師がいます。
松下歯科医院(愛知県大府市)の院長・松下至宏先生です。
きたる12月5日(水)、大府市健康にぎわいステーション(愛知県)にて、口腔乾燥症が引き起こす弊害、原因、治療法についての最新情報を紹介する健康講座を開催します。
中村耳鼻咽喉科の院長と連携して行う健康講座開催のために、松下先生は6か月間の時間をかけています。
現在、糖尿病と歯周病の相関関係が注目されていますが、歯科が連携できるのは糖尿病専門医だけではありません。

(有)Willmake143 代表
田中 健児