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地域包括ケアを支える次世代型歯科医院【3】ヘルスリテラシーの向上に取り組む歯科医院

2018年11月02日

毎日新聞の「健康を決める力」というコラムをご存じですか?

ひと月に一度のペースで、このコラムを担当しているのは聖路加国際大学大学院教授の中山和弘先生です。
中山先生は保健医療社会学、看護情報学が専門で、ヘルスリテラシー、ヘルスコミュニケーション、意思決定支援を研究テーマにされていて『ヘルスリテラシー~健康教育の新しいキーワード』(共著・大修館書店)などの著書があります。
最近では、女子栄養大学出版部の月刊誌『栄養と料理』2018年10月号が特集した「ヘルスリテラシーを身につけよう!健康情報それ、ホント?」を執筆されています(図1)。

特集の中で、ヘルスリテラシーとは「健康や医療に関する情報を入手し、理解し、評価して活用する力」だと中山先生は定義しています。
リテラシーとは元来、読み書き能力を意味するので、ヘルスリテラシーとは健康情報の読み書き能力ということになります。
生活習慣病の予防や、その進行を抑制できる選択肢や情報がいま増え続けているので、信頼できて、自分にあった情報を適切に選び取る力=ヘルスリテラシーが健康のために必要不可欠なのだと中山先生は語っています。

ヘルスリテラシーが注目されるようになって、健康や医療の情報を患者さんと共有する場を設ける病院が現れ始めました。
慶應義塾大学病院の「健康情報ひろば」、聖路加国際病院の健康ナビスポット「るかなび」、国立がん研究センター中央病院「生活の工夫カード」コーナーなどです。
患者さんだけでなく地域住民なども利用できるこうしたコミュニティースペースは、ヘルスリテラシーの向上のための重要な場となっています。
また病院利用者や地域住民のヘルスリテラシー向上を支援することは、地域包括ケアシステムの成功の鍵でもあります。
東京大学高齢社会総合研究機構教授の飯島勝矢先生が作図された、栄養(食/歯科口腔)からみたフレイルの流れの中には、孤食、社会参加の欠如、ヘルスリテラシー(オーラルリテラシー含む)の欠如などが、第一段階のフレイル期を引き寄せることが明示されています。

先生方の歯科医院では、患者さんや地域住民のヘルスリテラシーの向上のための活動に取り組まれていますか?
今回はヘルスリテラシーの向上に取り組む歯科医院をご紹介します。

1979年開業の新井歯科医院(大阪市生野区)は、今年親子間での事業承継を行い、引き継いだ新院長の新井是英先生はその活動を本格化させています。
その原動力になっているのは、就任して日も浅い新院長が抱く危機感です。
開業地の生野区の高齢化率31.4%(2015年時点)が2035年には38.4%になり、人口も約25,000人減少することが予想されています。
そこで新井歯科医院は、弊社がキュレーションサービスとして提供している「健康の入り口」誌を活用して、スタッフ持ち回りで毎月発表会を行い、健康と医療の情報の共有とそれを患者説明に役立てることから始めました。
こうした院内発表会を続けていると、「来院患者の安全面に配慮したいので、一次救命の講習を受けたい」という要望がスタッフから上がり、現在では地域の消防署で研修を受けるまでになっています。
また、口腔機能低下症の疑いのある患者さんに新卒の歯科衛生士さんが「健康の入り口」などを使って、ポリファーマシー(多くの薬を服用することにより副事象を起こすこと)について説明できるようになっています。(図2)

“5年後”地域の中でどのポジションを目指すか、人口減少と高齢化が進む地域の歯科医院にとって新井歯科医院の取り組みは、とても参考になる事例です。

(有)Willmake143 代表
田中 健児