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【5】身に着けておきたい歯周外科治療

2018年06月04日

皆様こんにちは。
東京都世田谷区で開業しております岩野義弘です。

第4回は、歯周治療のなかでももっとも大切な非外科的歯周治療についてお話 させていただきました。

ほとんどの歯周病は、非外科的歯周治療で治せます。
しかしながら垂直性骨欠損や根分岐部病変など、それだけでは対応しきれない 病態も存在します。
そのような時に必要になるのが歯周外科治療のスキルです。

そこで第5回は歯周外科治療について考えてみたいと思います。

1.歯周外科治療の種類

歯周外科治療は大きく以下のように分類されます。

・切除療法
歯肉切除術、歯肉弁根尖側移動術+骨切除術・骨整形術、ルートセパレーション等。

・組織付着療法
歯根面および歯周ポケットの内部に蓄積した細菌および細菌由来の汚染物質を徹底的に取り除き、歯肉軟組織が根面に付着するのを促すことを主目的とした手術法。歯周ポケット掻爬術、新付着術、フラップキュレッタージ(アクセスフラップ手術)、ウィドマン改良フラップ手術などが含まれます。

・歯周組織再生療法
骨移植術、歯周組織再生誘導(GTR)法、エムドゲインやリグロスといった増殖因子などを応用した歯周組織再生療法等。

2.臨床で行う機会の多い「クラウンレングスニング」

多くの歯周炎は非外科的歯周治療で治りますので、近年歯周炎に対して切除療法を行う機会はかなり少ないですが、う蝕や破折が原因でフラップ手術を行う機会は多いです。
歯肉縁下までう蝕や破折が及ぶと、生物学的幅径が侵襲される恐れがあります。
生物学的幅径を確保するため、健全歯質(クラウンマージン)から歯槽骨頂まで、最低2mm以上距離をあける必要があります。
また補綴する際、歯根破折を引き起こさせないために重要な、最低1~1.5mmのフェルールが確保できません。

そのようなケースで頻繁に行うのがクラウンレングスニングです。

まずメスを用いて骨膜を残した部分層切開を加え、近遠心に縦切開も入れ、メスを用いて部分層のフルフラップ(台形状の粘膜弁)を形成します。
次いで骨膜付きのエンベロップフラップ(縦切開を入れない粘膜骨膜弁)を剥離し、ダブルシックネスフラップとします。
固有歯槽骨をラウンドバー、フレーシースケーラー、シュガーマンファイルを用いて切除し、フェルール+生物学的幅径+αで最低5mm以上健全歯質を確保します。
骨膜弁を縫合後、粘膜弁を根尖側に移動、マットレス縫合にて縫合します。
ただしこれは隣在歯の存在しない場合にしか応用できません。
隣在歯が存在する場合、隣在歯の固有歯槽骨も切除することになってしまうからです。

その場合、まずエクストルージョンにより歯を挺出させた後、歯周靭帯に引っ張られてきた歯肉および歯槽骨を、上記と同様の手法で外科的に根尖側に移動します。

このダブルシックネスフラップの形成は、インプラントも含めた他のさまざまな外科治療にも応用できるので、ぜひ獲得してほしいテクニックです。

3.歯周治療の花形「歯周組織再生療法」

歯周外科治療といえば、何といっても歯周組織再生療法です。
医療において数少ない、失った組織を再生できる(可能性のある)手法です。
現在もっとも頻繁に行われているのは、エムドゲインを用いた歯周組織再生療法です。
また昨年より新たにリグロスが認可され、臨床応用されています(厚生労働省認可材料のみご紹介しております)。

しかしながら、これら再生材料を単に塗布すれば治るわけではありません。
より確実な結果を得るため、成功のポイントは多々あります。
とくに重要なのが、プラークコントロールの徹底です。
良好なプラークコントロールは、術中の出血のコントロール、確実な歯肉弁の閉鎖に必要不可欠です。

私はプラークコントロールレコード(PCR)10%以下を目指します。
個人的見解ですが、10%以下の方は明らかに術後の治癒が良いと感じています。

術式の面でとくに重要なのが、歯間乳頭を温存した確実な切開(私はCortellini と Tonettiによる切開方法:歯間幅が2mmより広い場合にはModified Papilla Preservation Technique: MPPTを、2mm以下の場合にはSimplified Papilla Preservation Flap: SPPFを選択)と、縫合(基底部の内式交叉マットレス縫合と歯肉弁閉鎖のためのローレル法もしくは単純縫合)です。

さらに、骨欠損形態に応じて、骨補填材料や生体遮断膜の併用が有効となります。
たとえば3壁性骨欠損であっても、骨欠損の角度が36°以上と広いケース、あるいは根分岐部を含むケースでは、再生材料のみでなく骨補填材料の移植を併用したほうが有意に大きな臨床的アタッチメントレベルの獲得が期待できます。
骨移植材料としては自家骨がベストですが、採取が困難な場合には人工骨を用います。
私は現在主にβ-TCP(オスフェリオンデンタル:オスフィール・テルフィール)を用いています。

詳しい術式につきましては、別冊the Quintessence YEARBOOK2018「気鋭歯科医師が歯を残す・守る」(クインテッセンス出版)の52~54ページに掲載いたしましたので、参考になさっていただけますと幸いです。

4.術者も患者さんも喜びの大きい「露出歯根面被覆術」

歯根面が露出すると、審美障害、知覚過敏、根面う蝕といった問題が生じてきます。
そのような問題をクリアする最良の手段が露出歯根面被覆術です。

1956年、GrupeとWarrenによって、最初の予知性の高い根面被覆術である歯肉弁側方移動術が報告されて以来,、有茎弁移動術、遊離歯肉あるいは結合組織移植術双方における数多くの臨床術式が報告されてきました。

なかでも、もっとも予知性が高い手技は、結合組織移植術と歯肉弁歯冠側移動術との併用です。

結合組織片の採取は、主に口蓋から行います。
上顎第一大臼歯遠心~上顎第一大臼歯近心から良質の結合組織が採取できます。
遠心程脂肪組織は少ないですが、口蓋粘膜は薄いです。
近心へ寄るほど厚みは増しますが脂肪組織が増えます。
そういった解剖に留意しながら、慎重に切開を行います。

切開方法はライン状とし、口蓋上皮に平行に薄く切開します。
慣れるまでは近心に縦切開を加えたトライアンギュラー切開とした方が、失敗が少ないと思います。

次いで骨膜を残して平行に切開し、近遠心の縦切開、基底部の横切開を行い採取します。
遊離歯肉を採取して上皮のみを削ぐZucchelliテクニックは侵襲が少なく良質な結合組織が採取できますが、上皮の取り残しに留意しなければなりません。

上顎智歯のない場合には、上顎結節から良質な結合織を採取可能ですが、量が限られます。

受容床の形成法は種々ありますが、Zucchelliのバイラミナテクニック、Allenのトンネルテクニックあるいはエンベロープテクニックが頻用される手法であり、私もどちらかの手法を用いることが多いです。
再生を期待してエムドゲインを併用することもあります。

難しいオペほどやり遂げた際の達成感は大きいです。
ただし無謀なオペはしてはなりません。
歯周外科治療成功のためには、術前のシミュレーションが大切です。
スタディキャストモデルを製作し、実際に切開線を描いて頭でしっかりイメージしてから歯周外科治療に臨みます。

やりがいをもって、楽しく歯周外科治療に取り組みましょう。

岩野歯科クリニック
岩野義弘
http://www.iwano-dc.com/