2018年04月16日
皆様こんにちは。
東京都世田谷区で開業しております、岩野義弘です。
第1回は「歯周治療に不可欠なチーム力」と題し、スタッフに高いモチベーションと向上心をもって仕事に臨んでもらうために、
われわれがどのようにアプローチしたらよいかについて考えました。
生活習慣病でもある歯周病を改善するためには、スタッフの力が不可欠です。
しかしそれだけでは、健康を取り戻し、維持していくことはできません。
そこで第2回は、「二人三脚で取り組む歯周治療」と題し、
いかにして患者さんにも積極的に治療に参加していただくか、考えてみたいと思います。
1)プラークの病原性
歯周炎は、歯周病原細菌の感染に起因して生じます。
歯周炎の活動部位からは、
Red Complex(Porphyromonas ginigivalis、Tannerella forsythia、Treponemadenticola)に加え、
Aggregatibacter actinomycetemcomitans、Fusobacteriumnucleatum、Prevotella intermediaといった細菌が多く検出されます。
口腔内には800種類以上の細菌が存在していると考えられています。
それらはプラークを形成し、相利共生(シンバイオーシス)しています。
そのような免疫学的にバランスがとれた状態であるところに、
上記のような細菌(とくにP. gingivalis)がトリガーとなって平衡状態が破壊(ディスバイオ―シス)されることで、
歯周炎は発症すると考えられています。
2)プラークの成熟
プラークは、初期付着菌群が歯面に付着、定着、増殖することからその形成が始まります。
その成熟には、数日~1週間程度しか要しません。
すなわち口腔清掃を施しプラークを除去したとしても、
何らかの対策を講じなければあっという間に再形成、成熟してしまうのです。
プラークが除去されずに残ると、
初期の歯石は、わずか5日以内に形成されるとの報告もあります。
だからこそ重要になるのが、プラークコントロールなのです。
3)ブラッシングの重要性
プラークは機械的にしか除去ができません。
そのため患者さんによるセルフケア(ブラッシング)が重要となります。
いくら歯科医師、歯科衛生士が適切な歯周治療を行ったとしても、
患者さんが適確にブラッシングをし、プラークを除去できなければ、
その効果は半減します。
患者さんのモチベーションと技術の向上および維持が重要となってきます。
それでは、患者さんをやる気にさせ、技術を高めてもらうためには、
どのようなブラッシング指導が効果的なのでしょうか。
・ブラッシング指導1:情報提供
まずは患者さんに現状を把握していただく必要があります。
初診時に行うさまざまな検査の結果は、後日資料として差し上げるとともに、
口腔内写真やX線写真をモニターにて大きく拡大表示しながらていねいに説明します。
そして、
「改善のためになぜブラッシングが重要なのか」
をわかりやすく解説します。
クリニックには社会的地位の高い方や、日々家庭あるいは仕事で多忙な方など、
さまざまな患者さんが来院されます。
そのような方々に納得して行動変容を起こしていただくためには、
ただ単に採取した資料をご覧いただき、画一的な説明をするだけでは不十分です。
できるだけ科学的根拠に則った情報提供が必須と考えます。
そして、「この分野においてはスペシャリストである」ということを示す必要があります。
だからこそ、知識を得るための日々の努力が大切なのです。
発する言葉の裏に確かな土台があって初めて人を納得させられるのだと思います。
この点については次回のコラムで詳しくお話しさせていただきます。
・ブラッシング指導2:オーダーメード指導
口腔内環境や社会背景は十人十色です。
通り一遍な指導では、
患者さんはある程度までしか磨けるようにならないでしょう。
患者さんの意見や社会状況等も勘案して指導するのがより効果的です。
たとえば、
忙しくてどうしても時間がとれないという方へのデンタルフロス指導では、
慣れと定着を促すためにまずは前歯のみ使用していただくなど。
その方その方に合わせた用具、指導方法を選択します。
オーダーメードな指導が求められるのです。
・ブラッシング指導3:熱意
何より大事なのは、
その方の歯周病を一緒に治して差し上げたいという熱意です。
心から良くしてあげたいという気持ちは、行動にも表れますし、
患者さんにも伝わります。
その気持ちが自身の学習意欲にもつながり、
知識の積み重ねが自信となり、
言葉に説得力が生まれます。
そして治療効果が出たら褒めて差し上げるとともに喜びを共有する。
医療の原点でもありますが、そういった気持ちはとても大切です。
そういうところから患者さんとの信頼関係が生まれるのです。
4)通いたくなる医院の雰囲気づくり
患者さんに気持ちよく通っていただいて初めて治療が成立します。
受付スタッフのみならず、皆が患者さんに対して笑顔でこんにちはと挨拶する。
スタッフ同士も笑顔でありがとうと言い合える環境作り。
患者さんが心地良く感じる、通いたくなる雰囲気づくりも重要です。
それが来院の継続、ひいては長期的なSPTへとつながるのだと思います。
患者さんとわれわれが協力して、二人三脚で歯周病を治していく。
日々のペリオが10倍楽しくなるコツの1つです。
岩野歯科クリニック
岩野義弘
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