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【4】非外科的歯周治療でほとんどの歯周病は治せる!

2018年05月19日

皆様こんにちは。
東京都世田谷区で開業しております岩野義弘です。

第1回から第3回まで、日々のペリオと10倍楽しく向き合うため、われわれ歯科医療従事者が歯周病学を楽しく学びつつ、歯科医師、スタッフ、患者さんがチームとして同じ方向を向き、歯周治療に取り組むことの重要性、方略、意義について考えてまいりました。
今回からは各論に移っていきます。

まず第4回は、歯周治療のなかでも基本中の基本であり、もっとも大切な非外科的歯周治療について考えてみたいと思います。

1)歯周治療の基本的な流れ

まずは歯周治療の流れについておさらいしたいと思います。
歯周治療は、以下のような流れて行います。

初診・応急処置

歯周組織検査・診断・治療計画立案

歯周基本治療:プラークコントロール&モチベーションの獲得→スケーリング→不良補綴装置除去およびプロビジョナルレストレーション装着→予後不良歯の抜歯→ルートプレーニング→う蝕治療→感染根管治療→不良習癖の修正→咬合調整他(※ただし前後する場合あり)

再評価検査

歯周外科治療

再評価検査

口腔機能回復治療:矯正治療→インプラント埋入手術→咬合治療→補綴・修復治療

再評価検査

サポーティブペリオドンタルセラピー:SPTもしくはメインテナンス

2)非外科的歯周治療とは

歯周ポケット除去を目的とした歯周治療のうち、歯周外科治療以外の治療法を指します。
従来は歯周基本治療中のプラークコントロールとスケーリング・ルートプレーニングのみを指していましたが、現在はそこに抗菌療法やレーザー療法等を含みます。

・ブラッシング指導:バス法は本当に有効なのか?

歯周病患者に対するプラークコントロールにはバス法が有効であるとよく言われます。
バス法は、1954年医師であるCharles Cassedy Bassが79歳の時に報告したブラッシング方法です。

しかしながらプラーク除去効果を比較した過去の多くの報告より、スクラビング法やスティルマン改良法等に比べてプラーク除去効果が有意に低いことが示されています。

ちなみに当院では、歯周病患者であってもブラッシング指導の基本はスクラビング法であり、歯ブラシの種類を変えたり種々の補助的清掃用具で不足部分を補強したりしています。
ブラッシングの目的は歯肉縁上プラークの除去ですからね。

とはいえ、バス先生の考え方を否定するものではありません。
彼はブラッシング法よりもデンタルフロスの有用性についてこの時代(50年以上も前!)から言及しているのです。この考えは現在に通じます。
皆様もこういった古い論文の原文を読んでみてください。
面白い発見が多々あります。

3)非外科的歯周治療はどのくらい有効なのか?

Baderstenらは、1981年から1987年までにわたる一連の研究のなかで、適切な口腔衛生指導とSRPとの併用が、重度歯周炎に罹患した単根歯の歯周組織改善に有効であることを示しました(ただし7mm以上の深いPDがすべて3mm以下へと改善するというわけではありません)。

その際、手用スケーラーであっても音波・超音波スケーラーであっても、同等の効果が得られることが併せて示されました。
対して、大臼歯部の根分岐部病変の改善は困難であることがわかりました。

私どもは、たとえ7mm以上のPDを有する歯であっても、適切なセルフケアが確立されていれば、歯科衛生士によるSRPのみで十分に(3mm以下のPDにまで)改善可能であると考えています。
ただし、これはわれわれの考え方であって、エビデンスはありませんが。
厳密なプラークコントロールがなされ、とくにPCR(%)が一桁となるようなモチベーションの高い患者さんのケースでは、単根歯はもとより大臼歯部であってもかなりの確率で重度歯周炎が改善されます。

一方、深い骨内欠損が残存すると、歯の喪失リスクが高まるとも報告されています。
そのため、歯肉歯槽粘膜病変の改善やう蝕にともなうクラウンレングスニングを除き、歯周外科治療はほぼ歯周組織再生療法のみしか行っておりません(必要がないため)。

4)全口腔一括法:Full Mouth SRP(FMSRP)は意味がないのか

FMSRPは1995年、最初にQuirynenらによって報告されました。
細菌が唾液を介して他の歯周組織へ伝播することから、彼らはその機会をなくすため、全顎を一気にSRPすることを考えました。その際、抗菌療法も併用します。それによりPDを有意に改善できるとしました。

ところがその後、他の著者らによっていくつかの検証がなされ、現在ではFMSRPの効果に疑問が呈されています。 

しかしながら当院では、広汎型侵襲性歯周炎患者、広汎型重度慢性歯周炎患者に限り、条件に一致した場合にFMSRPを積極的に行っています。
この際、術前に細菌検査を行い、同定した細菌に対する抗菌療法も併用します。
それにより、FMSRP施術時約50%の確率で生じるとされている発熱を抑える効果も狙えます。

PCR(%)はやはり一桁までいくほうが良い結果が得られるという実感があります。
文献的には有意差はないのですが、「特別なことをしている」ということが患者さんのモチベーション向上に寄与していると思われることが、同法を応用している最大の理由です。
患者さんの明らかな行動変容を実感しています。

5)抗菌療法はどういう場合に使えるのか

抗菌療法は、前述のFMSRP時以外に、易感染性の患者に対して行います。
とくに糖尿病を含む全身疾患罹患患者には、術中における菌血症に対応するため、抗生物質の術前投与は必須であると考えています。

6)スケーリング・ルートプレーニングを成功させる秘訣とは

・まずは基本をよく理解する。
グレーシースケーラーの特徴(カッティングエッジの角度、オフセットブレード、部位特異性等)、適切なシャープニング方法、歯面への当て方(第一シャンクを歯面と平行にし、歯石除去の際にはやや角度をつけ圧をかけ短いストロークで、ルートプレーニングの際には角度を甘くし弱圧で長いストロークで)、刃部の先端1/3を当てること。
そこから歯種や部位、根面の性情の違いによって当て方、方向、刃部の形状(ミニファイブ等)をオーダーメードで決定、施術します。

・歯石触知の感覚を養う。
プローブ先端が指先になったような感覚で神経を集中させ、歯根面を触知します。
まずは抜去歯で感覚をつかみ、続いて口腔内で視覚的に認知できる歯石を触知しながら感覚を養っていくと良いでしょう。

・拡大視野下で行う。
現在歯科衛生士でも、拡大視野下で診療を行うことはスタンダードとなってきています。
マイクロスコープには常備されていますが、ルーペであればライトは必須です。
拡大はもちろんのこと、光が直接届くことで視野は明瞭になります。
見えることでクオリティは上がりますし、失敗も認識できます。
これからの臨床においてなくてはならないものです。

何より、プラークコントロールの確立が成功の秘訣です。
結局近道はありません。
知識の習得と地道な努力が必要です。

遺伝的要因が強く、急速に進行するタイプの歯周炎には注意が必要ですが、ほとんどの歯周病は歯科医師および歯科衛生士による非外科的歯周治療により改善が可能です。

やりがいをもって楽しく歯周治療に取り組みましょう。

岩野歯科クリニック
岩野義弘
http://www.iwano-dc.com/