2003年10月20日
歯垢や歯石が多量に付着している口を見ると、ついつい強い口調で言いがちです。
それは、”相手に歯を磨いて欲しいから”という思いからでた言葉です。
でも相手を変えようと思う前に、まず自分が変わる必要があると思います。
自分が変わらないのに、人を変えようなんて虫のいい話です。
動機づけが、上手くいかないのは、自分に力がないからだと考えると、勉強すべきことはたくさんあります。
さて、ここであらためて聞きたいことがあります。
「あなたは、患者さんの歯を磨かせたいのですか?それとも、患者さんと良い関係を結びたいのですか?」
この様に考えてみると、後者の”患者さんとの良い関係を結ぶ方”と答えられるでしょう。
しかし診療室では、対等な関係で話をしているつもりでも、患者さんはそうは思ってくれません。
さて、アドラー心理学という心理学があります。この心理学では、“あなた(You)メッセージ”より“私(I)メッセージ”を使うことを勧めています。
例えば、歯周病が進行している患者さんに、スケーリングを行ない、家庭でもきれいに磨かれているようなので、動揺がおさまり、歯肉の状態が改善されました。
さて、そんな患者さんに対する、最高のほめ言葉を考えてみてください。
あなたはどのように、話をされているでしょうか・・・?
一般的には「歯磨きを頑張っておられるので、きれいな歯(歯肉)になってきましたね。」などと話します。
このように患者さんが行なったことを、客観的に述べる方法を”あなたメッセージ”と言います。
それでは、“私メッセージ”とは、どのような言葉を指すのでしょう。
これは、自分が思ったこと、感じたことを素直に話すことです。
先ほど、歯周病の患者さんに対する言葉に続いて、「・・・だから、私はとっても嬉しいです。」と話すと、患者さんは、どの様な顔をされるでしょう?
患者さんは「この先生は、私の歯がきれいになったことを、自分のことの様に喜んでくれている。このような方にめぐり合えてとってもよかった!」と思ってくれるでしょう。
「よし!私自身のためにも、そしてこうして一緒に喜んでくれる人のためにも、もっと頑張ろう!」という気になります。
このようにして良い関係が築かれるのです。
術者・患者間の関係を対等にするために”私が感じたこと”すなわち
”私メッセージ”で話すことが重要です。
さてこれからの診療。あなたはどの位、アイ・メッセージを使うことができるでしょうか。