2003年08月18日
歯科医療のレベルのアップには、2通りの考え方がある。
第1は、インプラントや、歯の漂白など最新の医療技術を駆使して医療を行う・・すなわち、歯科医療の頂点をさらに高めることである。
そして第2は、かかりつけ歯科医として、同じ患者を継続的に診ていくこと。
その中で、最新医療技術や修復物の予後の把握も可能になる。
これは、歯科医療のボトムアップ、すなわち底辺を高めることにもつながる。
さて、現在8020運動推進のために、地域でさまざまな活動が行われている。しかし、歯科医療従事者はこの運動に対し、具体的な到達目標を持っているだろうか?
この運動を、公衆衛生上の目標値に止めてはならない。
まず現在、診療中の患者さんから達成してみせる。そんな目標を掲げては、どうだろうか?
社会的な達成は、その延長上にあるように思う。
この患者さんの8020を達成してみせる。そのためには、どのような治療をすればよいのだろうか?どのような説明をすれば、信頼関係が得られるのか?対社会的にどのような活動をすれば良いのか?
これら“どのような?”という問題点を解きほぐす必要がある。
ところで現在、アメリカでは「Cavity treatment」と「Caries treatment」の語句を意識的に使い分けられている。
「Cavity treatment」とは,単に軟化象牙質を除去し充填するだけの意味である。
一方、「Caries treatment」とは充填のみならず、齲蝕の発生した背景にまで遡り処置を講ずることであり、これが本来の歯科医療の姿である。
残念ながら、これまでの歯科医療における術者―患者関係は、治療開始と共に始まり、終了と共に終わってきた関係であった。
さて、慢性疾患の治療の基本は、術者―患者の信頼関係である。
歯科疾患の多くは、不規則な生活習慣がもたらす慢性疾患でありながら、その治療方法は、急性疾患に対応してきたものではなかっただろうか。
齲窩を見て齲蝕と診断することは、誰でもできる。しかし、歯科医療従事者の腕とは、患者さんが見えないものを、どう診るかにかかっている。
いずれにしても、自院の患者さんの8020の達成を考えた場合、まず定期健診に来院していただくシステムの構築が重要である。
その中で、生涯を通じて健康な口腔の育成・保持を行う“かかりつけ歯科医”としての機能が要求されている。
そして歯科診療の予後を、時間軸から考える必要がある。
それでは充実した定期健診に来院していただくために、どんなことを考慮しておけば良いのだろうか?次回からこの点について述べたい。