2002年10月21日
我々歯科医師が、患者の口腔内に義歯を装着した当初は、何の問題も生じずに機能を発揮していたにも拘らず、時間の経過と共に、義歯が口腔内で緩みが出たり、咀嚼機能時に痛みを伴い、機能障害がおきだすことによく遭遇します。
これらの原因には、いろいろなことが考えられますが、主な原因としては、義歯を装着した後に、無歯顎顎提が生体の変化として、顎骨の吸収を起こしたことでしょう。
これには、咬合の不調和や、床内面から顎提粘膜に伝達される、咬合力の不均衡などが考えられます。
臨床的に現れてくる所見としては、原因がどこにあろうとも、顎骨の吸収により、義歯床内面と床下顎提との間に空隙が生じだし、義歯の動揺が大きくなった後、最終的段階として咀嚼時の粘膜の疼痛や、義歯の維持安定が損なわれ、咀嚼機能障害が引き起こされることです。
そこで、この機能障害を回復するためには、ただ単に義歯床内面と顎提粘膜との隙間を床用材料で埋めるだけで、この問題は解決するのでしょうか?
たしかに見かけ上は、隙間が埋められて義歯の離脱が起きなるかもしれないが、機能時、即ち食物の咀嚼時に、顎提粘膜とのフィット感が出てくるか否かが大問題なのです。
筆者は、過去において、何度もティッシュコンディショナーを用いて、粘膜調整を終えた後、直接法によりリライニングを行なってきました。
そのさい、多くのケースにおいて、短期間の予後で再び粘膜に疼痛を覚えるということで、義歯の新製を余儀なくされたことがあります。
そこで、何故ティッシュコンディショナーの段階では、痛みや義歯の動揺が大きくならず、機能回復が図れたのかを考えてみると、ゲル化したティッシュコンディショナーによって、機能印象(動的印象)が採得できていたにも拘らず、その面を壊してしまい、その後あらたに床用材料(リライニング材)で印象していたに過ぎなかったのではないかと考え出した。
よって、あらたに印象をおこなった際に、硬化時に重合収縮の大きいレジンを使用してしまうと、リライニング後の痛みが発現してしまうのではないかと考えるようになり、現在では間接法を多く用いるようになった。
しかし、間接法には、患者から義歯を預からねばならないという、最大の欠点があり、どうしても義歯が預かれないという患者に対しては、直接法を採用するが、その際には少しでも重合時の収縮量が小さいものを採用している。
そういう意味でも、モリタが販売している「バイオライナー」は、使い勝手が良く、使用させて頂いています。
しかし、このような材料を使用して、直接リライニングをおこなう時には、確実に筋形成を行い、外形だけは適正に保っておかなければならないと、考えています。
次回からは、間接法についてお話していきたいと思っています。