2002年06月17日
新製義歯、またはリライニング後の義歯を口腔内に装着する際に、咬合調整を行わないことはないといってもいいすぎではない。
しかしこの常に行っている処置が、思った以上に困難で、われわれ歯科医の頭をいつも悩ませていることは間違いないと思います。
まずこの処置を行うにあたって大事なことは、ただ単に赤く咬合紙の色が付いたところをやみくもに落としていくだけではなく、どのような咬合様式を採用して人工歯配列を行ったかを把握しながら調整をしなければなりません。
筆者は咬合調整を行うにあたって、自分の採用した咬合様式であるリンガライズドオクルージョンを頭で描きながら、中心咬合位では上顎の機能咬頭が下顎の人工歯の中心窩に位置し、なおかつ垂直にあたるようにします。
側方運動時には、その咬合面上でスムーズな滑走運動が行えるように調整しています。
このように言葉にして述べると非常に簡単なように思えますが、実際処置を行ってみると口腔内で義歯は動くし、患者は同じ位置で咬合してくれないし大変困難です。
咬合紙を用いて咬合させながら、当然義歯の動きがどのような状態なのかは観察していなければいけません。
そしてその際に、咬合紙の色がついた人工歯部分だけを観察するだけに頼らず、術者が指の腹で義歯に触れながらタッピングをさせてみると意外なほど正確に、早期接触を起こしている部位を発見する事ができます。
次にやっておくとよいことは、タッピング時の咬合音を聞いておくことです。
このときの咬合音が濁った濁音の場合には、どこかで咬合の不調和が生じているので、その部位を探さなければなりません。
その際に、上記に述べたように指で触れて判別したり、咬合紙側を観察してその色が抜けた点をチェックするようにしましょう。
なかなか人工歯側に付いた咬合紙の色では判別しにくいことがよくあります。
このようにして、咬合の調和がとれた際の咬合音は、奇麗な澄んだコツコツという音が出ます。
もし興味のある先生は、聴診器を用いて咬合音を聞かれると、その差が明確にわかると思います。