2002年08月19日
総義歯にかかわらず、可徹性義歯を装着している患者の場合に、義歯を装着してからの時間経過とともに、義歯床と顎堤粘膜との間に不適合が生じてくる場合があります。
その原因のなかで最も大きいのは、顎骨の吸収という生体の変化が起きることで、義歯はその変化に追従できないので、結果として不適合が生じてしまった事であるといえるでしょう。
このような不適合を処置せずに放置しておくと、顎堤粘膜が義歯の動揺によって傷ついたり、粘膜に歪が生じたりするケースが多く見られます。
我々はその際に、まずティッシュコンディショナーを用いて粘膜調整を行い、顎堤粘膜を正常な状態に保つような処置を行います。
その後、リライニング処置へと移り、義歯床と顎堤粘膜との適合を図り、咀嚼機能の回復を試みます。
そこで、ティッシュコンディショナーを用いて、ティッシュコンディショニングを行っているときに患者さんたちが、「痛みもなく非常に噛みやすい」と、おっしゃる事の真意を考えてみる必要があるかもしれません。
ティッシュコンディショナーが、軟らかいために痛みが出ないのではなく、ダイナミックインプレッションが採得されていて、いわゆる動的印象面が再現されているために、咬合圧が加わっても、痛みを感じないで咀嚼が出来るためでないかと思います。
そうすると、顎堤と義歯床との不適合が生じた場合に、粘膜調整を行ったこの内面を全くゼロに戻して、義歯裏装材を新たに直接法で床内面に塗布して、義歯裏装を終了してしまうのはどうだろうと考えています。
やはり動的印象面をうまく使用して、間接法にて床裏装を行う必要があり、その方法によって、患者さんがよりよいデンチャーライフを満喫してくれるのではないかと考えています。
そして、その裏装を行う際に、重合時の変形の少ない軟質裏装材を用いることで、より適合精度が保たれると信じています。
ぜひ先生方も、いちどこの方法をお試しいただければと思っています。