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義歯外形の調整

2002年05月20日

本来は、義歯の印象採得時に、床の外形は適正な状態で決定されていなければならないのですが、なかなか現実には理想通りにいかず、義歯が製作され口腔内に試適.装着する際には、義歯外形の調整が必ずといっていいほど必要になり行はなくてはなりません。

では調整せねばならないところと、それに伴って、患者さんが訴える代表的なものを具体的にこの項では述べてみたいと思います。
 
 
【1】小帯の部位が明確に再現されていない場合。

このようなケースでは、まず小帯部を避けすぎているケースはほとんどなく、大半が小帯の上に義歯床が覆い被さっていて、小帯をおおきく傷がついています。

その結果、上唇小帯ならば鼻の下に痛みを、舌小帯ならば舌を動かす際の痛みを、下唇小帯ならば口を動かす際の痛みを、そして頬小帯ならば物を食べる際のほっぺたの痛みなどを、患者さんが訴えます。

口腔内の諸器官および諸組織は、機能運動時にそれぞれ特異な動きをするため、小帯の上を義歯床が抑えてしまうと、義歯を離脱させる原因のひとつになります。

特に、上顎の場合には咀嚼時のみならず、喋っている時によく義歯が外れると患者が訴えることが多く、そのような場合にはまず小帯部のチェックをする必要があると思います。
 
 
【2】 義歯床外形が大きい場合

このようなケースでは、歯肉頬移行部のような可動部と非可動部の境目にナイフで切ったような傷がついいていることが多く見られます。

このような状態の時には、食物の咀嚼時に頬を刺すような痛みがあると患者が訴えます。

その際の痛みは強く傷も大きいのですが、長い部分を削除して短くすることで比較的簡単に痛みや傷は治癒します。

これに反して下顎舌側部が長い場合は、傷がつくほど長ければ別ですが、さほど義歯床も長くなくないため傷もなく、「舌を動かすと義歯が動きやすい」と訴えるので、なかなかそのトラブルを見つけ出すことが困難です。

なぜならば、下顎の義歯の動きにはかなり多くの要素が複雑に絡み合って起きることが多いためです。

この様な場合筆者は、義歯を指で抑えておいて舌を動かさせてみて、その動きを阻害していないかを丁寧に観察しながら、抑えている指で義歯を動かす力が加わっているか否かを感じながら確認しています。
 
 
以上義歯の外形の不適合による代表的なトラブルを述べてみましたが、印象採得時の適正な機能運動が再現されていれば、床外形の調整はかなり少なくなると信じています。