2014年05月30日
これまで、尊敬語・謙譲語その1・謙譲語その2・丁寧語・美化語・クッション言葉についてお伝えしました。
今回はよく耳にする間違い敬語を取り上げます。
まずはテストです。
次の言い方は適切かどうか、( )の中に○と×を書き入れてみてください。
登場する、「小林さん」は患者さんです。
(1)( )お名前を頂戴できますか?
(2)( )ご予約の小林さんでいらっしゃいますね?
(3)( )小林さん、保険証はお持ちになられましたか?
(4)( )小林さん、HPを見れましたか?
(5)( )先生、小林さんをご案内してもよろしいですか?
(6)( )小林さんの携帯でいらっしゃいますか?
間違い敬語はあふれていますので、耳なれた言葉もあると思います。
しかし、適切ではない言葉を重ねると、患者さんに不安を与えます。
さらに、間違い敬語の恐さは、信頼感を失うオソレがあることです。
よく耳にする間違い敬語をあげていますので、この機会に確認しておきましょう。
(1)(×)お名前を頂戴できますか?
これは、よく耳にする間違い敬語です。
「お名刺を頂戴できますか?」との混同かとも考えられています。
短くて便利な言い方なので、広まったのでしょう。
ただし、名前はあげたり、もらったりするものではありませんので、言い換えましょう。
正しくは、「お名前をお聞かせいただけますか?」「お名前を教えていただけますか?」などです。
(2)(○)ご予約の小林さんでいらっしゃいますね?
正しい表現です。
相手の名前を確認するときには「小林さんでございますね?」よりも、「小林さんでいらっしゃいますね?」を使います。
尊敬語を使ったほうが、敬意がストレートに伝わります。
(3)(×)小林さん、保険証はお持ちになられましたか?
「お持ちになる」で尊敬語化されていますので、さらに「れる」をつける必要はありません。
二重敬語と呼ばれています。
二重に敬語化したからといって、丁寧さが増すものではありません。
過不足なく、スマートに敬語を使いたいものです。
正しくは、「保険証はお持ちになりましたか?」です。
その他、二重敬語には「おっしゃられる」「ご覧になられる」「おいでになられる」などがあります。
それぞれ「おっしゃる」「ご覧になる」「おいでになる」が正しい言い方です。
(4)(×)小林さん、HPを見れましたか?
いわゆる「ら抜き言葉」です。
「見られましたか?」が元の言い方ですが、尊敬の意味なのか、可能の意味なのか、受身の意味なのか、紛らわしい言葉です。
「ご覧になれましたか?」とすれば、すっきりと伝わります。
(5)(○)先生、小林さんをご案内してもよろしいですか?
正しい言い方です。
自分の行為を低め、行為の向かう先の患者さんを立てています。
患者さんがその場にいるとき、患者さんを立てるのは当然のことですが、患者さんがその場にいなくても、患者さんを立てて話す姿勢は、患者さんにも自然に伝わることでしょう。
(6)(×)小林さんの携帯でいらっしゃいますか?
最近増えている表現です。
「小林さんでいらっしゃいますか?」が正しい言い方です。
小林さん以外の人が出ることはほとんどないと思いますが、小林さんの声とは違っても、
「小林さんでいらっしゃいますか?」とまず確認すればよいのです。
NHK学園専任講師
山岸 弘子