2010年09月06日
こんにちは。デンタルクリニック会計事務所 山下です。
歯科医院専門の数字の専門家の立場から、ぜひ知っておいてもらいたい歯科医院の数字のポイントを解説してきましたが、第5回目は固定費をめぐる改善策を取り上げます。
●基本的に「ムダな固定費削減」よりも「売上げを上げること」が大事!
多くの歯科医院の先生が、税理士さんに「利益が出ないんですが、どうしたらよいのでしょう?」とたずねると、「そうですね~、ムダな固定費を見直しましょう!」という答えが返ってくるのではないでしょうか。
しかし、私は、基本的に「ムダな固定費削減」は意味がないと思っています。
それは、どういうことか?
たとえば、コピーは裏紙を使ったり、電気代を節約したり……。
ところが、このようなことをやり始めると、どうしても働く側の感情が内向きになってしまい、医院全体がどよ~んとなってしまうのです。
その上、本来絶対に削ってはいけない「情報」などの経費削減まで考えてしまいます。
今まで購入していた歯科の臨床や経営の情報誌や書籍、あるいはセミナー参加などを中止してしまうのです。
これらは、とても費用対効果の高い投資なのですが、固定費削減という意味で、これらを間違って削ってしまうことが多々あります。
そうなってくると、どんどん医院は「内向き」「下向き」「後ろ向き」になってしまい、さらに医院の売上は下がっていくことになってしまいます。
もちろん、ムダ使いはいけませんが、それよりも大事なのは「売上げをもっと上げること」なんです。
私は、売上高が1億円ぐらいまでの歯科医院さんについては、経費削減のお話しはほとんどしません。
今月は通信費が少し高かったとか、研修費が少し多かったとか、それは過去のことであり、それを議論しても「だから何なの?」で終わってしまうことがほとんどではないでしょうか。
それよりも、どこにどういったお金を投資して、それ以上のリターン(売上げ)を上げていくのかを考えるほうが、最終的に手元に残るキャッシュは増えることになるのです。
逆に、1億円を超えてくる規模になると、売上高だけではなく、固定費についてもしっかり管理をしておかなければ、売上げは上がっているのになぜかお金が残らない、という事態が発生してきます。
●経費削減では医院は大きくならない、大きくするには「投資」しかない
私は現在、事務所の組織化のために、石原明さんという有名なコンサルタントのアドバイスを受けています。
石原明さんは『営業マンは断ることを覚えなさい』や『成長曲線を描こう』の著者で、組織化には非常に定評のあるコンサルタントです(名著ですので、お持ちでなければぜひご購読をお勧めします)。
私は、石原さんに最初お会いしたときに、次のようなことをいわれました。
石原「山下さん、経営者の仕事って、何かわかりますか?」
山下「経営者の仕事ですか……? たとえば、売上を上げることですか?」
石原「違います。経営者の仕事は、どこにどんなお金を使うのかを考えることなんです」
つまり、「経営とは投資である」ということです。
このことを理解しておかないと、どうしても固定費削減に走ってしまいます。
私は、いろいろな医院さんの顧問をしてきた経験上、「ムダな投資を恐れていては、医院は大きくならない」とはっきりといえるのです。
経営とは、常に不確実なものにお金を使っていかなければなりません。
たとえば、「人」への投資です。
人を雇ったからといって、売上げがいきなりポーンと上がるでしょうか?
歯科衛生士さんを雇うために求人広告を出したからといって、絶対にいい歯科衛生士さんを採用できるでしょうか?
まずありえません。
しかし、経営とはこのような不確実なものについて、投資を行っていかなければならないのです。
●医院を大きくするための「投資」の5つのステップとは?
では、医院を大きくするためにはどんなものに、どんな順番で投資をしていかなければならないのでしょうか?
それは、次の5つです。
1:マーケティング
2:医院器械設備
3:採用
4:教育
5:医院環境
これは、コンサルタントの石原明さんの考えを、私なりに歯科医院向けにアレンジしたものです。
次回は、この医院を大きくするための投資について、一つずつ解説していくこ
とにします。