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【3】何を目的に歯周ポケット測定を行っていますか?

2017年11月06日

歯周病治療を行ううえで、歯周組織の入念な診査は必要不可欠です。

なかでも歯周ポケットの測定は、
前回に述べたX線診査と並んで極めて重要な診査項目であるのはご存じのとおりです。

もちろんのこと、歯周病に関連する主訴を受診の動機に来院された患者さんの場合、
入念な歯周組織診査とその結果に基づいた診断、
その診断に基づいた適正な治療計画を立案することに同意していただくことは、
そんなに難しいことではないでしょう。

しかし、う蝕や歯髄炎などを主訴として受診してこられた初診患者さんに対して、
いきなり14枚のデンタルX線撮影や6点法での歯周ポケットの測定への同意を得るのはなかなか大変なことです。
(もしも28歯残存しているとしたら、28×6=168点の計測をしてそれを記録する必要があります)

初診からあまり期間が経っていない時期ですとラポールは確立しておらず、
炎症や歯石、不良補綴装置や歯列不正などが存在する口腔内では、
たとえ熟練した歯科衛生士といえども正確なポケット測定を行うことは非常に困難だと思います。

一方、患者さんにしたら
「痛くもないのに長い時間、歯肉をチクチク突き刺されて大変だった」
となりかねません。

そこで、私の考えは、
「初診時のポケット測定値はあくまでも参考値」であるということです。

歯周ポケット測定を困難にする要素があれば、
その理由をカルテに記録し、やみくもに数値を得ることに執着しないことが肝要です。

また、上顎・下顎や左側・右側など、部位を分けて測定し、
1回での処置時間をあまり長くしないような工夫も大切です。

さらに、当院の歯科衛生士には必ずデンタルX線14枚法を確認しながら歯周ポケット測定時を行うことを推奨しています。

たとえ肉眼的に炎症所見がなくとも、
垂直性骨欠損が認められることはそうめずらしいことではなく、
デンタルX線にて骨吸収やそれを疑う所見、歯根膜腔の拡大を認める部位があれば、
そこはとくに入念な診査をする必要があります。

もちろんのこと、症例発表や歯周病関連の学会において、
認定医・認定衛生士の資料作成では常に正確な資料採取が求められるのは当然です。

しかし、実際の診療では、それぞれの患者さんの理解度や協力度によって、
なかなかガイドラインどおりにすべてが進むことなどないのは、日常臨床に携われている皆さんがご存じのとおりです。

実際の臨床では、患者さんの了承のもと歯周基本治療が進み、
プラークコントロールの向上やスケーリング・ルートプレーニングにより歯周組織の状態は改善し、
不良補綴装置は清掃性の良いテンポラリークラウンへと置き換えられていきます。

このような時期には、患者さん自身も自分の口腔内の状態が改善されてきているのを実感し、モチベーションは高まり、
ラポールは確立していきます。

したがって、歯周基本治療が終了した時期では、
歯周ポケット測定を阻害する因子は排除されており、入念な診査が可能となっているはずです。

ここで得られた数値は、歯周基本治療終了後に維持療法へと移行していけるのか、
それとも歯周外科ステージへと進むのかの判断根拠となりますから、極めて重要な意味をもちます。

また、歯周外科処置後に行う歯周ポケット測定は自らが行った歯周外科処置後の経過判定の資料となり、
インプラント治療や最終補綴処置(咬合機能回復処置)などを行える判断根拠となりえます。

さらに、すべての動的治療が終わった後の歯周ポケット測定では、
維持療法やメインテナンスへ移行できるのか否かの判断根拠となり、
これまた非常に重要な臨床資料となります。

今回の内容をまとめますと、
単に歯周ポケット測定を行うといっても、
その検査をどの治療時期に行っているのかを考えることが重要です。

それぞれの治療時期に応じて、
歯周ポケット測定から得られた結果の臨床的な使用目的が異なるのです。

すべての医療検査とは、数値を得ることが目的ではなく、
そこから得られたデータをもとに診断と治療方針を決定することが目的です。

当院は歯周病専門医院ですから、
歯周病を主訴として来院される患者さんが多く、
さまざまな歯周病関連の診査を行うことに同意していただくことは困難ではありません。

日本国民の80%が何らかの歯周病に罹患していると言われている現在、
日本全国の多くの歯科医院においても正しい歯周組織診査が行われ、
歯周病治療に同意される患者さんが増えることで、歯周病に罹患した患者さんが減ることを願います。

牧草歯科医院院長
牧草 一人
http://www.makigusadental.jp/