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【5】歯周外科治療

2017年12月04日

前回も述べたように、歯周病治療の基本的な流れは、

1)歯周基本治療 
2)歯周基本治療後の再評価検査 
3)歯周外科治療 
4)歯周外科治療後の再評価検査 
5)口腔機能回復治療(歯冠補綴や義歯の作製) 
6)サポーティブペリオドンタルセラピー(Supportive Periodontal Therapy :SPT)移行前の再評価検査 
7)サポーティブペリオドンタルセラピー(SPT)
8)メインテナンス

となります。

前回は、1)と2)に関する歯周基本治療について述べましたので、今回は歯周外科治療についてお話を進めていきます。

歯周外科治療は大きく2つに区分することができます。

1つ目は、歯周基本治療後にも深い歯周ポケットが残存している場合に歯周ポケットの除去や減少を目的として行うもの。

2つ目は、プラークコントロールの不良や歯周炎の再発が起こる原因となる軟組織や硬組織の解剖学的形態異常を改善するもの、
および審美的な問題点や補綴前外科処置として補綴装置の形態や清掃性に配慮して行われるもの(歯周形成外科手術)です。

ここでは、1つ目の歯周ポケットへの外科的対応についてお話を進めていきます。

歯周ポケットへの外科的対応法には大きく区分して、
切除療法、組織付着療法、歯周組織再生療法の3つに区分されます。

・切除療法

切除療法とは、歯周組織の形態修正をして歯肉・歯周ポケットを減らすことを目的としています。

具体的には歯肉切除術、歯肉弁根尖側移動術、骨切除術、骨整形術などが含まれます。

この方法では、歯肉のボリュームが減る(角化歯肉の減少や消失)ことにより歯冠長が長くなったり、
歯間乳頭が消失して審美的な問題が残ったり、歯根露出にともなう歯髄症状が出ることがあります。

したがって、増殖性歯肉炎などの歯肉増殖による仮性ポケットでの歯肉切除などには最適なのですが、一般的な適応症は、十分に角化歯肉があり、
最終的には歯冠補綴を行う(無髄歯が望ましい)ことを前提としていると理解するとよいでしょう。

・組織付着療法

組織付着療法とは、歯根面および歯周ポケット内部に蓄積した細菌および細菌由来の汚染物質を徹底的に取り除き、
歯肉が根面に付着するのを促すことを目的とした手術とされています。

歯周ポケット掻爬術、
新付着術(ENAP)、
フラップキュレッタージ(アクセスフラップ手術)、
ウィドマン改良フラップ手術などがこれに分類されます。

この方法は、
「歯肉を剥離した後、明視下でのプラーク・歯石の除去や炎症性肉芽組織を掻爬し、歯周ポケットの除去もしくは減少を目的とする一般的なプラップ手術」
と理解してもよいでしょう。

歯周ポケット掻爬術や新付着術(ENAP)はより侵襲が少なく、
歯肉をたくさん温存できることから、あまり重度ではない状態の前歯部や、歯冠補綴をしない天然歯での処置が適しています。

・歯周組織再生療法

歯周組織再生療法は、歯周組織の再生に関する研究の進歩により、さまざまな術式が開発されてきました。

骨移植術(自家骨、他家骨、他種骨、人工骨など)、
バリア膜を使用した歯周組織再生誘導法(GTR法)、
生理活性物質の臨床応用としてエムドゲイン(エナメルマトリックスタンパク質:EMD)を用いた手術などは代表的なものです。

また、本年からは世界初の歯周組織再生医薬品であるリグロスが発売されました。

これはエムドゲインが歯周組織再生「材料」であるのに対してリグロスが歯周組織再生「剤」であることが最大のポイントです。

つまり、リグロスのみが医薬品としての認可を得ているのです。

また、エムドゲインがブタ歯胚組織を使用しているのに対し、リグロスは遺伝子組み換えヒトbFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)であり、
動物由来のものを原材料とはしていません。

こう聞くと、リグロスに分があるように思われるのは当然でしょう。

つまり、最新モデルには最新の科学技術が応用されており、
旧モデルには旧来の科学技術が使われているということになります。

しかし逆の言い方をすれば、
最新モデルには長期的な安全性や安定性は保証されておらず、
旧モデルには長期的な安全性や安定性は保証されているのとも言えます。

ここで筆者が問いたいのは「最新は最善か?」ということです。

医療にかかわらず、自動車や家電製品などの新製品が不具合の発覚により、
リコールされることも珍しいことではありません。

もちろん、リグロスに問題があると言っているのではなく(それが証拠に筆者の医院ではすでに多くの臨床例があります)、
歯周治療にかかわらず、何か新しい商品や機材が開発・発売されたらならば、すぐに飛びつくのではなく、

本当に自分自身の臨床上の問題点を解決してくれるのか?

または、

本当にその治療法は患者さんの抱える問題点を解決してくれるのか? 

という考察が必要になります。

アイザック・ニュートンの言葉に
「On the shoulders of giant(巨人の肩の上に乗って)」
という言葉があります。

巨人とはいうまでもなく「基礎・基本」です。

すべての応用は「基礎・基本」の上に成立しているということを忘れずに臨床に取り組みたいものです。

牧草歯科医院院長
牧草 一人
http://www.makigusadental.jp/