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【2】歯周病治療におけるデンタルX線画像の診断のコツ~歯間部の歯槽骨頂部を詳細に観察しよう!~

2017年10月16日

近年の医療分野における技術革新は目覚ましく、
多くのイノベーティブな医療用診断機器がチェアサイドに届けられています。

とくに2000年に薬事承認、2012年に保険適応されたコーンビームCT(CBCT)の普及率は、
諸外国と比較しても群を抜いたものであることはよく知られています。

また、顎骨の骨吸収を特徴的な病態とする歯周病の診査にてCBCTを用いることで、
これまで一般的だったデンタルX線撮影ではしっかりと判別できなかった唇側部の薄い骨や根分岐部を
三次元的に観察できるようになったことは大きな福音です。

そうすると、これまでのデンタルX線診査は不要なのではないかという意見が出てくるのも仕方のないことかもしれません。

しかしながら、すべての診査をCBCTで行うことも現実的ではありません。

ここでは、放射線被ばくの問題については割愛させていただきますが、
人が「大量」の放射線を被ばくすれば悪性腫瘍、不妊、白内障や皮膚障害が起こることから、
不要不急の検査を実施しないようにし、
もし医学的根拠に基づいた必要性からCBCTを撮影する場合においても、
照射条件を工夫し、可能な限り低被ばくでの撮影に心がけるべきでしょう。

一方、デンタルX線撮影はフィルムそのものを直接口腔内に挿入し、
被写体である歯周組織に近接した位置にフィルムを設置することから、
低線量にて鮮鋭な画像が得られます。
(これを空間分解能が高いとも表現します)

しかし、これは被写体の重積像ですので、
複雑な解剖学的特徴をした歯周組織の構造を三次元的に診断するのは困難でもあり、
この点でCBCTと比較されるのはご存じのとおりです。

では、なぜ私たち歯周病専門医は臨床診断やケースプレゼンテーションにてデンタルX線14枚法を用いるのでしょうか?
(日本歯周病学会での認定医・専門医試験ではデンタルX線14枚法の提出は必須です)

歯周病治療における診査では、
基本治療中、基本治療終了時、歯周外科処置前・後、補綴処置前、SPT移行時、SPT時などさまざまな状況でデンタルX線撮影を行います。

この時に基準となる初診時のデータがないと病態の変化を見てとれません。
(もちろん、ここでは規格性のある撮影が重要です)

また、これだけの枚数をCBCT撮影することに同意できる先生も少ないでしょう。

一般に1枚の静止画像はその時の一瞬を記録したものです。

したがって、複数の画像を同時に観察し、それらを比較・検討して考察することにより、
これまでの病状の回復状態を確認したり、将来の予後を予見したりしているのです。

したがいまして、私が患者さんに伝えることは、

「確実な診査・診断をしたいので、たくさんのデンタルX線を撮影します。これが歯周病専門医の特徴です」

となります。

ここでちょっと裏技を。

前述したようにX線画像は複数枚の比較によりさまざまな考察を加えることができます。

しかし、たった1枚のデンタルX線写真でも現在の組織破壊の状態を把握したり、
予後を予測することもできるのです。

具体的には、歯間部の歯槽骨頂部を詳細に観察します。

その部分がびまん性(骨頂部ではグラデーションがかかったような、
ふわふわした綿菓子のようなと表現します)と判断した場合には、
今まさに骨吸収が進み、脱灰されているのだろうと考えられます。

一方、歯槽硬線とそれに連続する歯槽骨頂部の白線が明瞭(X線の透過像と不透過像の境界部が鮮明)な場合には健全な歯周組織か、
または生体の防御機構が回復した後であり、安定した予後が推測できると考えられます。

このような所見は患者さんにも容易に判別できることから、
治療や維持療法の必要性、または治療の成果を説明するには簡単で、便利なツールです。

一般的に、診査・診断とは生物学的原理・原則に則ったルールに基づくものであり、不変的であるべきです。

つまり、医療レベルにかかわらず、
どの歯科医師や歯科衛生士が行っても同じ診査結果であるべきです。

一方、治療計画の立案とは治療法の選択であることから、
個々の術者の技量や患者さんの希望によって左右されます。

もちろんのこと、たとえ同一術者でも継続学習にて
スキルアップしてきましたら、
おのずと治療計画の立案に対する考え方も変化してきます。

つまり、治療計画(治療法の選択)は可変的なものだと言えます。

したがいまして、一般に表現されている「診査・診断・治療計画」ではなく、
「診査・診断」と「治療計画」と私は区分しています。

私は、正確な診査・診断(不変的)に基づき、
患者さんのニーズに合致した複数の治療計画(可変的)を立案することこそが、
多くの患者さんから信頼される歯科医師への第一歩だと考えます。

牧草歯科医院院長
牧草 一人
http://www.makigusadental.jp/